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「ハルキ」
呼ばれた名前に振り返る。
俺を呼んだそいつは小走りでこっちにやってくる。それをただ黙って、そいつが辿り着くのを待った。
目の前まで来るとそいつはニカッと笑って片腕を俺の肩に回してくる。
「今日も食堂だよな?何食うー?」
俺よりも三センチほど身長が高いそいつの茶髪が、喋るたびにふわふわと揺れる。
「カツ丼」
素っ気なく答えた俺に、そいつは一瞬驚いた表情をする。けれどそれはすぐに、笑いへと変わった。
「おまっ、三日連続でカツ丼じゃん。飽きねーの?」
今だに肩に腕を回したまま、目の端に涙をためて笑うそいつに思わずその腕を払って頭を小突く。
「うるせー。そういうお前は何食うんだよ」
「えー、カレー」
「お前も連続じゃねーか」
バレたかー、なんてよくわらかん事を抜かしながら先を歩いて行くそいつの後ろ姿を見ながら、思わず溜め息が漏れた。
「ハルキー!早く昼飯行くぞー!」
いつの間にか出来ていた距離に、そいつが急かすように俺を呼んだ。
「わかってるから、そんなでけぇ声で呼ぶな」
追いついた俺がそう言うと、そいつは悪戯が成功した子供みたいに笑う。
「すまんすまん」
謝る気など殆ど無い謝罪の言葉は、もはや恒例行事だ。
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