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「……あ」
「え?」
「ふふ……やはり僕は天才だな」
「何をボソボソと言ってるの? 聞こえないんだけど」
突然高らかに笑い出し、エマよりも先に立ち上がったエドワードの表情は既にいつもの彼に戻っていた。しかし今日は3割増しに酷く、面白い悪戯を見つけた小さな子どものように浮ついている。
「聞こえなくて結構だシンプソン。せいぜいクリスマスはあくせくアルバイトに精を出して、お間抜けフローリーと一緒にファッジより甘いファンタジー小説を読み耽るがいい。そうさ、夢を見るのは庶民であれど自由だからな!」
早口言葉のような台詞を捲し立てたエドワードは、ひとしきり笑い終わったあととびきりの笑みを作ってエマに顔を近づけた。
「よいクリスマスを、Ms.シンプソン」
「全く……今日のあなたは訳がわからないわ。でももうあなたのその嫌味ったらしい顔を見ないで済むと思えば清々するわね。そちらこそ、よいクリスマスを。Mr.スペンサー」
我が物顔で闊歩していくスラリとした長身が視界から消えた途端、エマは本日最大のため息を吐いた。
「なんだかものすごく、嫌な予感がするわ」
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*ファッジ・・・イギリスのお菓子でしっとり柔らかなキャラメルのようなもの。世界で一番甘いお菓子と称される。
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