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犬猿の仲とは、この2人のためにあるような言葉だった。首席の庶民代表エマと次席の富裕層代表エドワードの争いの歴史は、彼女らが入学してすぐの頃まで遡る。
ことあるごとにエマに突っかかり、嫌味や悪態を吐くのはエドワードの方だった。裕福でもないただの特待生が首席を取り続けるのはやはり面白くない。
しかしエマはそこで泣き寝入りするような人間でも、相手が富裕層だからと尻込みするような人間でもなかった。
ノーはノー。嫌は嫌なのだ。エマは決して挫けることも負けることもなく常に首席を取り続けており、エドワードもまた、エマいじりをやめることはなかった。
そして今日も始まってしまった口論という名の痴話喧嘩。それに耐えかねた生徒たちが1人もいなくなるまで、互いの口撃は怯むどころかどんどんエスカレートしていた。
最後の1人が飽き飽きしながら図書館を後にし、司書のマダムミラーまでが管理室へ引っ込んでいく。
バートン校へ多額の寄付金を納入しているスペンサー家の息子に物申すことができる人間など、エマと一部の教師を除いてほとんどいなかった。
その頃、エドワードはもう考えなくても吐ける悪態をベラベラと言い連ねながら、チラチラ周りを見渡していた。隅々まで見渡すこと数秒、胸の内でハァとため息をつく。
────やっと誰もいなくなったか
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