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新たな王 (完)
国王との約束を胸に秘め、俺はゲラルドを出る。
ルードスまでの帰り道の中、一人で考え事をして歩いていた。
「王様になる…か。」
王様になれば、その目標に近づく為の権威くらいは恐らくもてるとは思う。
猫は愛くるしく、親しい相手には最大限の想いを表現してくれる。
だがそれ故に、気まぐれな上愛情表現は多感…不満を抱くと相手を攻撃することも一切躊躇わない。
他にも考えなければならないのは、他種族との共生だ。
前世の俺、人間の場合は極端にひどい話で、侵略・蹂躙して従わせる事を悪いと感じる指導者はいなかったから、そうならない為の決まり事や約束事を改めて決めなければならないかもな。
「う~ん、考えれば考えるほど難しくなってきたぞ?ただでさえおよそ一月の間に金稼ぎと学校、そして結婚式が同時進行だし!
…一つずつ、解決するしかないのかなぁ?」
今は種族の特性について頭を悩ませ過ぎないでおくことにした俺は、ルードスへとたどり着くのであった。
町の皆と軽く挨拶しながら帰宅した俺を、ラーナを含めた家族全員が家の中でくつろぎながら迎える。
「「「おかえり~!」」」
「お?ナルガス帰ったか。」
「お帰りナルガス。国王様と一体何を話してたの?」
「うん…その事で皆も落ち着いて聞いてほしい。これから話すのは公に公表されるまでは言い広めて欲しくない。
いつからかはまだ分からないけど、次期国王になる事が決まったんだ。」
全員「えぇーー⁉︎」
「…あ、でもお兄ちゃんならピッタリかも‼︎
今猫族を含めて全ての種族に好かれているんだから、きっと上手くいくよ!」
「レダ姉さんの言う通り!ナル兄ぃは私達、イェルガー族とも初めて仲良くなれた。
だから、どんな相手とも仲良くなれるよ‼︎」
「ナルガス兄ちゃん、王様になったら何するの?」
「そうだな。殺し合いなんてしなくても、今皆が暮らしてるように安心に暮らせる国づくりをしたいと思ってる。
神様との約束[癒しと和み]も、それできっと果たせるかも知れないから…」
「…ナル兄ぃ、あたしも皆に相談したいことがあるんだけど。」
「ん?どしたのラーナ。」
隣にいたレダが、彼女に尋ねてくる。
「私が神様からもらったスキル…[真実の目]の事なんだけど、封印したいと思ってるんだ。でも、いざって時は使いたいよ?」
「え?それは構わないけど…何か嫌なもの見た?」
俺達家族は心配そうに覗き込む。
「うん…姿や形がお兄ちゃん達みたいに違った見た目の種族を、国の人達にも時々いた。
でもそれは気にしてないの。不安なのは、ナル兄ぃやレダ姉さんが使ってるオーラ視ってあるでしょ?
あたしの方はなんか、みんなが心に考えてる事が[命の色]って表示で見えちゃうの!
正直、怖いよ……」
家族「……」
「レダ、ラーナのスキルを封印してあげられないか?多分今のこの子には、荷が重過ぎる。そんな気がするから…」
「お兄ちゃん…」
「じゃあナルガス。明日また、ゲラルドにでも行くか?」
「うーん…いや、父さん。昼過ぎにグラゼンドのロウガ神官に会ってくるよ。
多分ラーナのスキルについて、解決策か助言がもらえるかも知れないから。」
「明日かぁ。私もついて行きたいけれど、発情真っ盛りなあの3人娘達に合う相手を探してあげなきゃいけないし。」
「レダ。そんなことまでしてたのか!」
「もちろん‼︎そうしなきゃお兄ちゃんが取られちゃうかも知れないでしょ⁉︎」
あっ、なるほどそういう事か。
「うふふふ‼︎ナルガス、レダをちゃんと安心させてあげさなさい?」
「お母さん。もしナルガス兄ちゃんが王様になったら、お姉ちゃんはお妃さん?」
「「ボッ‼︎(照)」」
「ナル兄ぃ、あたしも一緒に行く‼︎」
会話をそらされて少し怒るラーナ。
「分かった分かった!じゃあラーナ。明日の午後、俺と一緒にグラゼンドに行こう?やっぱ本人にもついて来てもらわないとな。」
「わーい‼︎」
軽めだが、ラーナが俺の頬にキスをした!
「ラーナ!なにさりげなくお兄ちゃんとキスしてんの~⁉︎」
そんな楽しいやりとりがしばらく続き、家族の皆と一緒に町の温泉でリラックスした後帰宅する。
食事を済ませ次第レダがラーナの[真実の目]を封印したので、俺達はそれぞれの部屋で眠りについたのだった。
「おはようお兄ちゃん!ほら、早く起きて?」
「う、う~ん…ムニャムニャ」
「もう!遅刻しちゃうよ?…じゃあ起こしてあげる…♪レロレロレロ」
なんと!レダはナルガスの尻尾を舐め回した⁉︎
「あ!あふぁ~⁉︎(ゾクゾク‼︎)……レダ、なにやってんの!」
言いようのない快感に思わず目を覚ましてしまった俺は、2本ある俺の尻尾をいやらしく舐めているレダを見て大いに焦る。
「えへへ。こうでもしなきゃ全然起きてくれなかったんだもん♪」
「くそぅ、かわいいやつめ(笑)」
俺はレダのお腹辺りを優しく撫でた。
「にゃ~ん♪」
「もう、朝っぱらから何やってんだか。ほら二人とも?早く支度しなさい!」
「「は、はい⁉︎」」
母さんに見られてしまった…
すぐさま二人ともそれぞれの部屋で着替えて食事を取る。
「あっ、そうそう!私とお父さんも今日は臨時教師として行くから、一緒に行くね。
ラーナも、今日学校に来なさい?」
「えっ。良いの?」
「か、母さん…オスには人気は出るだろうけど、メスには目の敵にされたりしない?」
さりげなく俺は助言するものの…
「むしろ若いオス達が元気になって良いわよ!メス達の方が今強いんだから。」
マジか…
家族全員で学校に着き、ラオーガは先に教室へ行く。
ラーナは俺達先生がいる職員室に一旦来てから、転校生として紹介されるようだ。
「じゃあお兄ちゃん。今日も頑張ろっ!」
「おう!レダ。ラーナを頼む」
二人で頷き合って、それぞれ教室へと向かって行った。
2日目になると、本格的に教えておかないといけない授業を自身も体験しなければならないので、他の男性教師につきながら授業のイロハを学んでいく俺。
楽しい授業はあっという間に時が過ぎ、もう下校時刻となった…
「楽しかったぁ~‼︎ナル兄ぃ、学校って楽しいね!」
家族全員で帰りながら、ラーナは初めてできた女友達・コロッポ、リノッコ、ドレアの3人娘を中心に、男女問わず親しくなれたらしい…結構な事だ。
「はぁ…一時はどうなるかと思ったよお母さん。ラーナったら、教室に入った途端にオス達に群がられてこっちは落ち着かなかったんだもの。」
「うふふ。本当ねレダ!でも、良い刺激にはなったと思うわよ?これで猫族の娘達も、ナルガス以外の男に意識を向けざるを得なくなるわ。ただ、あとはあの3人ね…」
「その事なんだがなレアナ。あの子らの暮らしていた所から転校してくる、同じ種族の男の子達が近々入ってくるらしい。」
おお。ナイスタイミング!流石は神様‼︎
(ふっ、軽いもんだぜ。)
天界で神様はドヤ顔をして座っていた。
すぐに帰宅して食事を済ませてのち、出る支度を済ませた俺とラーナは早速グラゼンドに行くのである。
「待って。ナルガス!」
「ルーナ。どうしたんだそんなに慌てて?」
「わ、私も一緒に行く。予知夢を見たの!私の会うべき相手が、そこにいるって。」
お相手探しか。ルーナも異性と仲良くしたい年頃だもんなぁ?
「よし、分かった。行くかラーナ、ルーナ!」
「「うん‼︎」」
ドーランからもらった空間ボールを作るリングを取り出し二人を空間で囲み、圧縮した後にはめたら一瞬で完成した!
俺は二人の入ったボールを片手に、ルードスを後にする。
1時間後、無事にグラゼンドについた俺達。
そこではルードスチームの皆がちょうど帰る所だった。
「あらナルガス!奇遇ねここで会うなんて。ちょうど私達、ゲラルドに帰るところなの。」
サラティが後ろで疲れていた皆の代わりに、俺に話しかけて来たのだが…
「そうかサラティ。…ところで、なんで皆疲れ切ってんだ?」
「よ、ようナルガス。実はよ、ちっとばかし気合い入れて指導をしてた訳よ。国民の全員が代わる代わる来たもんで、息つく暇なく教えてたんだ…サラティだけピンピンしてるのは理解できねぇがな?」
「えっへへ‼︎どういたしまして♪魔法を教えるのは簡単だったからね?」
「うぅ…僕もわかりやすく教えておけば、喋り過ぎなくて済んだかも。」
「そ、それで…ナルガス達は何しに来たの?」
シエッタがしんどそうに話しかける。
「ああ、ちょっとラーナの事でロウガ神官に相談したくてな。ルーナは…」
「私は!…恋人探し、です(照)」
「⁉︎…ほほぅ~?」
疲れ切っていたはずの皆は嘘のように元気になり、ルーナに群がり始めた!
その拍子に俺は軽く押され気味に、そばから離されてしまう。
皆はワイワイとルーナを囲んだままこの国にもう少し残ると言い始め、俺とラーナからそのまま遠ざかっていくのであった。
「ルーナ、俺達は教会に行ってくるから皆と探してきな?」
「わー!わ、分かったー‼︎」
お祭り騒ぎだな、全く…まぁそれほどルーナがこんな所に出てくることが珍しい上に、嬉しかったんだろうな?皆も。
「じゃ、行くか。ラーナ!」
「うん。ナル兄ぃ‼︎」
二人で教会に行くまでの通りを歩いてると信じられない事に、皆初心者装備ではあるがほぼ全て老若男女の国民が冒険者らしき姿になっていたのだ!
彼らは一体どんな教え方をしたら、ここまで急成長できたのだろうか?疑問しかない…
とにかく教会に無事に着いた俺達は、早速ロウガ神官を見つけたので声をかけた。
「ロウガ様!」
「おお!ナルガス様ではありませんか。ここの民の姿をご覧になられましたか?いやはや、ルードスチームというSランク冒険者の方々が献身的に一日中寝ずに彼らに教えてくださったおかげで、皆新しい可能性と共に自力で生きれる程の術を身につけられたのです‼︎
流石はナルガス様のご友人ですね!」
「あいつら…無茶しすぎだろ~⁉︎」
「ナル兄ぃも無茶してんじゃん。」
うっ‼︎返す言葉が見つからない…
「コホン!そ、それよりもロウガ様。一つ相談したいことがありまして。」
「あ、話そらした!」
俺は聞かなかった事にして、話を続ける。
「実は、ラーナのスキルについて…彼女の歳では、まだ真実をたくさん見るのは正直酷だと思いこちらの判断でレダに頼んで、そのスキルだけ封印してもらいました。
彼女が将来、一人でも誰かと関わることができるようになってから使わせた方が良いかなと思いまして。」
「…流石です、ナルガス様。あなたの仰る通り、今の彼女では心が先に潰れかねないと私も危惧しておりました。
そこでこんな提案はいかがでしょう?ラーナさんが教会の修道女として暮らし、慈愛と真理を知る心を育むのです。
真実を見る際に生じていく闇が心を支配しないように、まっすぐ立つ為に光ある道を探してみては?
きっと貴女なら、誰よりも優しく明るい心で民を導けるでしょう…」
「…それは、聖女になるということですか?」
「はい。神様も、自身に向いてくれる事を切に願っておられます。」
「ラーナ、どう思う?」
「…少し、考えさせて。」
「ええ。」「分かった…」
ラーナはそれ以上言わず、黙って考え事をしながら教会を後にした。
「…ありがとうございました、ロウガ様。
正直どんな言葉を言ってあげたら良いか、全く分かりませんでした。」
「構いませんとも。むしろ頼っていただけて光栄です。さあ、彼女と共に行きなさい…」
俺は一礼してからラーナを追いかけていく。帰ったらレダ達にもこの事を伝えよう…
「あ、ナル兄ぃあれ。」
入り口近くまで戻ってきた俺達は、ラーナが指刺す方向を見た。
「ルーナ達、なんで入り口前にいるんだ?」
よく見ると、もう一人増えてる?
「あっ!ナルガス様ー‼︎」
「やあナルガス、早かったね。もう帰るところかな?」
見ると、ドルファとドーランが空間ボールを作る準備をしかけていた所だったらしい。
「ああ。もしかしてその狐族の男は…」
「ややっ!ナルガス様ではありませんか。私です、グラゼンド王の所まで案内させて頂いた者です。申し遅れましたね、私はルォッツ…元騎士です!」
「そうか!ルーナ、良かったな?騎士の男だなんて(喜)」
「うん~…ポケー」
「全くもうルーナは。幸せすぎて呆けちゃうんだなんて…」
いいことじゃないかシエッタ。
「じゃあ、俺がゲラルドまで走って送るよ。良いか皆?」
「助かるよナルガス。ドーランと僕も、一晩のうちに鍛治の技をそれぞれが教えてたから正直疲れてて…」
なるほどな。そりゃ疲れるわ…
俺はラーナを含めて全員囲み、リングをはめた後ゲラルドへと直行した。
到着後、東の地にある土地をならして新たな国を作ろうと計画していた国王様達と出会った。
「おおナルガス!昨日の件で詳しい事は後日告げるのでな。ワシの所に来れる準備は、一応しておいてくれ?」
「あっ、はい!」
国王様は満足そうに頷くと、俺達の他にも走るのが早い者を数人連れて、国を留守にすると俺とラーナに伝える。
皆は「なんの事だ?」と尋ねてくるも、俺は「それは後でのお楽しみ♪」とだけ告げてルードスへと戻る。
彼らは首を傾げて、帰路につく俺達の背中を見つめていた。
「「ただいま。」」
「お帰りなさい二人とも。どう?何か言われたかしら?」
「あのね…あたし帰るまでずっと考えてた。
教会で修道女として暮らそうかなって。
今封印してもらってるあたしのスキルに対して必要な事が、そこで身につける事が出来るかも知れないし!」
「えっ⁉︎じゃあ学校はどうするの?」
レダは驚きながらも尋ねた。
「学校は行きたい!でも、暮らすのは教会にしようかなと思ってる。だから…」
俺達は共に顔合わせしてから、無言のまま満足そうに頷く。
「うん、良いわよ。正直もうちょっとこの家で暮らしてもらっても良かったんだけど、貴女がそう決めたのだから何も言わないわ。」
母さんは優しい目でラーナを見つめる…
「大丈夫よラーナ。私もお兄ちゃんも、学校以外にいつでも会えるから!」
「うん…うん‼︎」
こうしてラーナは俺達の家で暮らすのをやめて、ゲラルドのライさん達が暮らしている教会へと足を運ぶ為この家を出る。
町を一人で出るその後ろ姿は、まるで嫁入り前の娘が花嫁修行に向かうかのように慎ましく穏やかな雰囲気が彼女から漂っていた。
ありふれた日常を過ごすようになった俺は、ついにルネーガとサラティの結婚式にお祝い金を持って出席した。
ドルファ達ほど豪華ではないが、皆明るい笑顔で二人の結婚を祝う。
「ルネーガ‼︎結婚おめでとー!」
「ルネーガ。おめでとう!いつでもぼくとビーがいる北の地に、遊びに来てくれ。歓迎するから!」
ビーとヘルスは大勢の子供達を連れて、宙に浮かびながら祝福していた!
その日の披露宴が一段落ついた頃を見計らい、ドラルド国王の挨拶で[例の件]が告げられる事となる。
「皆、この場を借りてワシから一つ伝えておきたい事がある!長い間ワシはある望みを抱き続けてきた。それは、ナルガスがこの国の王になってくれる事だ‼︎
ワシは彼に託す事を告げ、彼はそれを受け入れてくれた。よって今日から二年後に、彼を王位継承者として戴冠式を行いたい‼︎」
「う、うおおおーー⁉︎」
この場にいた全ての民が、大いに喜び叫んだのであった。
「ナルガス!いつだか言ってた後でのお楽しみってこれの事だったのかよ!やってくれるぜコンチクショー‼︎(喜)」
「ぐへ!ぐはぁ⁉︎ヴォルス、痛いって(笑)」
口に含んでいたミール肉を思わず吐き出してしまうほど、強く背中を叩かれた俺。
「ナルガス‼︎期待してるよ?」
「早いとこレダと結婚しちゃえ!」
シエッタやリオンから結婚しろコールが出てきたよ⁉︎肝心のレダはと言うと…
「……(照)」
「レダ姉さん、モジモジし過ぎ。
…貴女は、愛しの夫を生涯愛すると誓いますか?(笑)」
「うきゃー⁉︎ラーナ今はそれやめてぇ‼︎」
「キャハハハ‼︎」
「ラーナ、チャチャ入れるんじゃねぇよ。」
今やお似合いのカップルであるルガースとミアさんが、レダをからかっていたラーナの後ろから頭を撫でた。
「ふみゅ…」
目を細めて気持ちよく撫でられているラーナは、真っ黒修道服に身を包まれている…
「すっかりその姿の方が見慣れちゃったな。調子はどうだ?ラーナ」
「うん。双子姉妹のお陰で毎日楽しいし、知らない事をライさん達からいっぱい教えてもらえてるから楽しいよ!」
「良かったな、ラーナ。…って、うおぉ⁉︎」
なんだ?急に俺が皆に担がれたんだけど!
「新たな王様ナルガスを、今のうちに胴上げだ~‼︎」
ジグルさんが皆の音頭をとって、俺を胴上げし始めた。こんなに喜ばれる日が来るなんて、夢みたいだ
今日この日から、俺は本当に忙しい毎日を送り始める。まずは学校の教師、冒険稼業、グラゼンドとゲラルドの橋渡しから冒険者ギルドに新ギルド長達を連れて行く仕事まで。
後は、他の彼らが行う結婚式の参加を挟みながら、新しい国土を作る手伝いをした後に国王様の所へ国の政策で必要な事を勉強しに行くといった、毎日目を回すほど忙しい日々を繰り返し続けていた。
「こ、これ。どう見ても俺働き過ぎ?」
「当たり前よ!お兄ちゃん、国土建設は他の皆がしてくれるからそれだけでも休んで?
じゃなきゃまた倒れちゃうでしょ。」
「そうしとこう…流石、未来の嫁。(まあ、 レダに一番似合う結婚首輪を作って貰いたくて、働いてたんだがな?)」
「バカバカバカバカ⁉︎(照)」
レダから嬉しい恥ずかしの連続猫パンチを喰らわされて、俺は笑っていた。
そんな忙しくも平和な生活を満喫し始めてから二年経った今日…ついに、俺とレダは結婚式を迎える。
「なんか、あっという間な2年間だったような気がするよ。レダ…」
「ふふっ、そうね。でも…とっても嬉しかった!あなたがこうして私以外の相手と関係をもとうとせずに、押し寄せる他のメス猫達に寄り添いもしなかったんですもの。」
「…では新郎ナルガス、そして新婦レダ・パラクレトスよ。天にいる神と、ここにいる民が祝福の証人です。
首輪の交換後に誓いの口づけを。」
どういうわけか、牧師のライさんではなくシスターのラーナが代わりに立って宣言してるのを見て、俺達は一瞬面食らった。
「…えへ(ペロッ)」
皆が見えるように可愛らしく舌を出してお茶目な表情を見せた彼女は、全てのオス猫達を魅力するのに十分だった。
「ははっ、好きだなぁラーナも。…レダ」
「はい、あなた。」
俺達は、首輪をお互いはめた後熱い口づけをした。
「良いぞー!ナルガス‼︎」
「結婚おめでとうー‼︎」
ルードスチームを始め、コルナ達やビー達にモンスターの仲間達。そして、あの毒スライム達がリノッコ親衛隊(?)と名乗り、慰安アイドルとなったリノッコ達の側で手を振ってくれていた。
この大陸にいる全国民からゲラルドを出た広い丘の上で、壮大な祝福を俺達は受けた!
「ありがとう、皆ー‼︎」
「私達、とっても幸せです‼︎」
そして披露宴が済んだ後俺達は再びゲラルドへと戻り、今度はいよいよ…
「…ではこれより、戴冠式を行います。ナルガス殿、玉座の間へお行き下され。」
「はい。ライ神官様」
ゲラルドの小さな城の三階にある小さな玉座内にて、俺は一人入らされた。そこには全種族の長と代表者、並びにギルド長ミアさんの姿も…
「ナルガス…前に来て、面を下げよ」
「はい。」
かしこまった態度で俺は静かに国王様の御前に跪く。
そして、ゲラルドの国王が静かに近づいてくる。緊張して手足が震えそうになるが…
「ナルガスさーん!大丈夫。リラックスして!(小声)」
(ミアさん!…)
俺が静かに深呼吸して、気持ちを落ち着かせたのを見計らい、国王様は更に近く。
そして今、俺の頭に王冠が被せられた。
「今この時より、ナルガスは正当な王位継承者と相成った。今から民達にその姿を示す為、面をあげ立ち上がれ!」
元国王となったドラルドは、俺に顔を上げて立つよう命じると外へ出るよう促す。
その通りに動き緊張した顔つきのまま、俺は表に姿を表すと国民が大声で褒め称えた。
「ナルガス王、バンザーイ」
「英雄王、バンザイ‼︎」
その国民が讃える声の熱気は、三階から姿を見せた俺のいるところまで届いていた‼︎
「皆、今日から新たな王となったナルガス・ヴァン・ゲラルドだ。まだ皆の為に必要な事がなんなのかは分からないが、共に悩み…共に歩んでいける王になっていけたらと思う。
どうか、俺に力を貸してくれ!俺も、皆の為にできる事を尽くすとここに宣言しよう‼︎」
俺の言葉を聞いた皆は、鼓膜が破れるんじゃないかと思うほどに、喜びの声を上げる。
それはまさに、強烈な風の音が周りを激しく包み込む渦巻のようであった…
その民の中に、高齢となったノーガルド元国王が涙を流して、従者達を二人付き添わせ優しく見守っていた事に俺は気付く。
もう言葉では言い表せない程嬉しかった。
何故なら、復讐に囚われていた彼の流す涙は、誰よりも心が癒されていたのだから…
その日の夜から前王ドラルド達が住んでいたこの城で、王妃となったレダと共に過ごす事になった。
「ふふ、今日はお疲れ様だったね?あなた!」
「…ああ、本当だなレダ。結婚式の後すぐ戴冠式って、緊張どころじゃなかったよ。
でも、ようやくこうして一緒になる事ができたな。」
俺はベッドに入っていたレダの頬を触り、彼女の裸体を優しく静かに撫でながら話しかけた。
「あんっ。ふふ!遠慮しないで、うんと私を抱いて?あなた。」
「喜んで…」
俺達は長い間我慢してきた[夫婦の営み]を翌朝近くになるまで、眠る事なくひたすら行い続けた。
それはまさしく番いとなった雌雄が一つに交わる事を喜びとした、貴重な瞬間である…
・あとがき
長い間、この作品を読んで下さいました皆様。大変ありがとうございます!初めて作品の終結ができて、内心ほっとしております。
本当ならもう少し話を膨らませて楽しんで作りたかったんですが、ダラダラと無駄に長く話を続けるとまとめられないと感じ閉じさせていただいた次第です。
後からまた、ストーリーではなく主要となる登場キャラクター達のステータスを書いたページも書きますので、ちょっと気になるな~って方は見てやって下さい(笑)
どうも、ガルバトスでした~!
下の画像は、カクヨムとエブリスタを拠点にして創作活動をしている[かぴゔぁら]さんというネームの方に作成してもらいましたぁ!
レダ「またね~!」
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