真の平和へとたどる道 2

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真の平和へとたどる道 2

明日の学校参加に備えて休む為、すぐルードスに着いたナルガス達。この町でも、彼の姿が様変わりしている事に気づき皆驚いていた。 ナルガス達はあの平原で起きた出来事と、その後に寄ったグラゼンドでの事を町の人達に囲まれながら語り、しばらく共に過ごす一時を楽しむ… そして、ジグルさんも国王様達と共にグラゼンドへの協力を相談する為、一晩向こうで泊まる事も伝えた。 「…ふぅ、あの時ナルガスが鬼猫に変わってしまった時は、私が未来視で見た一部の未来みたいにこの世界の終わりが来たんだと本気で思ってしまったわ。」 「はは、心配させてごめんねルーナ。 未来視ってスキルには興味がある話だけど、俺は神様との約束を守りたかった…それだけだ。 怒りは、誰も幸せにできないってようやく分かったから。でも感情がある限り、それに左右されちゃうね(笑)」 「ルーナさま、そろそろお清めのお時間ですよ?」 「はい、すぐに向かいます…」 「ん?ルーナさま…お清めって?」 「…⁉︎お兄ちゃんは見にこなくて大丈夫!女性同士のする事だから‼︎私達はそろそろ家に帰ろ?(言えない!温泉じゃないところで裸で川に入ってるなんて事、言える訳がない‼︎)」 「そうね。これはルーナが力を維持するのに必要としている儀式の一つだから、オスは絶対!覗きにきちゃダメよ~?」 母さんは含みのある笑顔をつくり、周りの女性陣達と共にルーナを囲んでその場を離れていった。 「…父さん、ルーナは何の儀式をするって言うんだ?」 「あー…俺も詳しくは知らないし見せてもらえてもいないから分からんよ。 まあレダは知ってるだろうが、多分男が聞いたらまずい内容とかじゃねぇかな?」 うーん、こりゃ父さんもなんとなく知ってるっぽい反応だな。まあ良いや、さっさと食べて寝よう! 「あたし、ナル兄ぃ達の家で寝ても良いのかな?」 「うん、大丈夫だよ。私と一緒に寝よっ?ラーナ!」 今夜は食事を6人でとる事になり、雌猫3人と雄猫3人がそれぞれが分かれて仲良く眠りについた。 翌朝 「…お兄ちゃん。支度はできてる?」 「ああ、問題ないぞ。ラオーガは既に出たようだけど、俺だけこんなに遅く出て大丈夫なのか?」 前世の記憶だと、生徒よりも先に教師達はきているんだが… 「普段なら本当はラオーガよりも早く出てるんだけど、お兄ちゃんが有名になりすぎたせいなんだからね! 少しでも女子生徒達と会わせないように、工夫しときたいから。 でないとお兄ちゃん、毎日追いかけっこで一日を過ごす事になっちゃうよ?」 「世話をかけてごめんな?レダ。ありがとう…じゃ、行くか!」 「うん‼︎」 レダに案内され一人で男子だけの教室に足を入れた時俺が見たもの。 それは、ラオーガを除いて見るからに落ち着きのなさそうな、各種族の男子達がそこにいた。 「えー、臨時教師として来たナルガスです。皆さんよろしく!」 男子達「ウオォォ⁉︎」 男子達も女子と同じく…ウルセェー⁉︎ とりあえず俺がその日教える事ができたのは、空間操作・多重層の作り方と猫族にウケが良い[あのスキンシップ]…男だけしかいないので、ぶっちゃけ毛づくろいで留めておいたのだが、他種族には効果はまちまちだった。 よって俺は他種族を一人ずつ出てきてもらい、彼らが気持ちいいと感じる所を発掘していく。…決して、[ソッチ系の趣味]を持った訳ではない。断じてない‼︎ その後は俺も彼らに今はどんな勉強をしているのかを聞いたり、昼前に外に出て俺もたまにしていた転移の練習を男子生徒達にさせてみた。 「兄ちゃん。転移ってスキル、とっても便利だね!僕、これ気に入ったかも‼︎」 「はは、そうか。まあ使いすぎない程度にな?…じゃあみんな、教室に戻ろう。」 男子生徒達「ハーイ‼︎」 俺達は速やかに教室に戻ると、生徒達と終わりの挨拶をして彼らは下校した。 「ふぅ~…なんとか終わったか。」 「お疲れ様お兄ちゃん。どう?なかなか楽しい子達でしょ!」 「レダ!うん、そうだな。自己紹介した時に騒がれたのは驚いたが、みんな良い子達ばかりだよ。 …まぁ、ちょっと転移方法以外にもいろいろ教えちまったが良かったんかな?」 今日の授業で俺が教えていた内容を、レダに詳しく伝えておいた。 「よりによって[触りっこ]の真似と逃げ道(転移)を作るスキルまで教えちゃったのね… 分かった。明日から私も女子達に、お兄ちゃんが言うところの毛づくろいと転移の仕方と対処法を私達で教えてみる。 明日からは私と一緒に行こうね?」 あっ、これ女子が男を追いかける遊びに発展しそう?…まぁ良いか! 「ああ!頼むよ。じゃ、今日は一度帰ってからギルドに行こうか。結婚式用の祝い金が毎週いるんだろ?(笑)」 「うん。多分お父さん達は既にギルドに向かったから、家で食べたら私達もすぐに行こう!」 二人で帰り支度をしていると、目の前の通路から擬人化したゲルル…そして、白い龍の形をした杖をつきながら、全身を白いスーツで纏って立派に伸ばした白髭の…見知らぬ人(?)が歩いて来ていた! 「ゲルル!どうしたのさこんな所で。」 まあ、だいたい想像はしてたんだが… 「よぉナルガス。なんか俺、今日からこの学校って所の先生をする事になっちまったんだわ。そう言う訳でよろしくな? あとこっちは、お前らが良く知ってる…あのゼムノス校長だぜ?」 「ふぉっふぉっふぉ‼︎」 「「えー‼︎ゼムノスーー⁉︎」」 俺はもちろん、レダもこの事は知らなかったらしい。ゲルルが擬人化の方法でも教えたんだろうか? 「いやぁ、愉快愉快!ナルガス坊っちゃまとレダお嬢様が揃って仰天する顔が見てみたかったもんでな。 どうじゃ、なかなか似合っていると思わんか?」 「うん!紳士だ‼︎」 「ゼムノス校長、すごい…」 「ふぉふぉ!…ありがとうのゲルルよ。 ワシのわがままを聞いてもらって!」 「こんくらい、お安い御用だぜ?爺さん‼︎」 「こりゃ!ここではちゃんとゼムノス校長と呼ばんかい⁉︎」 すっかり校長としての貫禄が板についてきてるなぁ、ゼムノス。 「まあまあ二人とも。とりあえずその辺で…ね?俺達はこれから帰宅して、ギルドで稼ぎに出る準備しようかなと。」 「ウムム、ワシももう少し寿命が長ければ、二人と共に行けるのじゃがのぅ…」 「爺さ…じゃねぇ。ゼムノス校長、体は大事にしとこうや?今のままを維持しておかねぇと、ギリギリもって50年が寿命だろ?せめて、土産話を楽しく聞くくらいにしとこうぜ。」 「わ、分かっとるわい。先日の決戦で無理やり万年龍になった反動が、かなり堪えているのでな?もう無茶はできん…」 そうか、もって50年…その頃まではせめて、ゼムノスには息災でいて欲しい。 「ゼムノス校長…私、あなたが退屈しないように生徒たちを連れてこの大陸にある土地をたくさん見せて、彼らが楽しかったと言える思い出をつくってみせる! だから、絶対生徒達の思い出話を最後まで聞いてあげてね!」 「ありがたいお言葉ですじゃ、レダお嬢様。それと…」 寿命の事ばかりは治す事ができない…誰もが分かりきっている事だけど、レダは最後の別れがすぐに来て欲しくないと訴えかけるように、その口を開いていた… 「ご安心なされよ。このゼムノス…おいそれとくたばったりは致しませぬよ?」 「…さ、お前らもそろそろ行かねぇと飯が食えなくなるぜ?ほら、行った行った!」 「ああ、分かったゲルル。また明日な!」 「おうよ!また明日だ。」 俺達はゲルル達と別れ、さっさと家路につく。 時折[あの]3人娘が遠くから獲物を見るような目線で俺を見ていたが、猫特有の独占モードに入ったレダの前には、どの種族の女子生徒も手をこまねいていた。 「あ、あははは…」 俺は内心嬉しいんだが、これはこれで諍(いさか)いが生まれそうだなと心の中で呟くのであった。 「「ただいま~」」 「遅いよお姉ちゃん達!」 「待ちくたびれたわよ!」 「ごめんごめん!ラーナ、ラオーガ。すぐに私たちも食べて準備するからね?」 「「ブーブー。」」 「お前ら、そんなふてるなよ…」 ラーナは当面の間、ゲラルドにいる兄ルガースに合流するのは避ける為、うちに居候する事にしたようだ。 理由はもちろん、彼がミアギルド長とデートするから! 流石にラーナもそこまでわがままではないので、正直感心している俺。 俺達はそんなラーナを優しく見た後、昼食を早めに平らげ食器の片付けをしてのち、出発の準備も完了させた。 「…はやっ⁉︎」 「そりゃお望みどおり早くしたんだから、別に構わないだろ?ラオーガ。」 「流石ナル兄ぃ!じゃ、早速ゲラルドに行こう?」 ラーナがはしゃぎながら急かすので、俺達はすぐに出発した。 4人で[軽く]かけっこを楽しんでたら、ゲラルドには5分でついてしまった… おおよそ前世の車で例えると、80~100㎞の速さに匹敵する事になる。 「そういやレダ。結婚式でドルファ達は槌を交換してたけど、ルネーガ達はどうなるんだろうね?」 ゲラルドについた俺達四人はギルドに向かいながら、結婚の証である交換物について会話をしていた。 「多分、竜族を象徴する爪か鱗とかじゃないかな?犬族は牙だし、狐族は大きい木の葉だって。 それに聞いた話だと、エルフ族は風と草木をモチーフにした、リーフって飾りを作るみたいだし。 私達猫族は…どうしよっか?」 「うん、俺もどれが良いか悩むな。分かりやすい物、か。」 俺は収納魔法に入れていたあの首輪をおもむろにとり出して、眺めていた… 「あっ!兄ちゃんの持ってるその首輪綺麗‼︎ねぇ、それを作って交換するのはどうかな?」 「うん。あたしもラオーガと同意見よ?ナル兄ぃ、それにしようよ。」 「私も、大賛成‼︎」 多数決か…まぁ、確かにこれがあった方が、猫にはしっくりくるわな。 「よし、じゃあライさん達にこの首輪を猫族による結婚の証にしようとお願いしてみようか!今日からうんと、忙しくなりそうだな(汗)」 「頑張ろ?お兄ちゃん‼︎」 「おう!(レダにつけたら、本当に似合いそうだ。)」 俺達はギルドの掲示板にあったモンスター討伐依頼と、更にラオーガの薬草採取の依頼も同時に受けてからライさん達のいる教会に向かった。 「ごめんくださーい。」 「あー‼︎」「ラオーガだぁ‼︎」 「アイカ、メイナ⁉︎…わぁ‼︎」 2人の雌猫に抱きつかれて赤面を隠せぬまま、2人から香る余りに心地よい匂いに負けて、とろけた目でその場でへたり込むラオーガ… 「おお、ナルガス殿達!よくぞ参られましたな。これから稼ぎですかな?」 「うん。その前に相談したい事があってね?実は…」 俺達は猫族の結婚の証に、首輪を作るのはどうかと提案した。 「良いではありませんか‼︎そう考えてみると、我らは結婚式で交換できたものは御座いませんでしたな…」 ライさん、落ち込んじゃったー… 「ま、まあライさん![結婚首輪]は今後装飾店に依頼して作ってもらおうよ。 ライさん達の分も、その時に作って貰えば?」 「そ、そうでありますな。」 「うん。じゃ、俺達はさっと今日中にこなせる依頼を片付けてからルードスに帰るから、また今度ね! ラオーガ、ラオーガ!そろそろ行くぞ? 2人とも、ラオーガを連れて行くけど構わないかい?」 「私たちもー!」「行くー!」 「連れてってやってくだされ。必ずお役に立ちます故!(そろそろジルカ達を休ませてやらねば、娘達の体力についていけなくなる⁉︎)」 おっ?一日でそんなに頼もしくなったか! 「分かった。2人とも、ラオーガの薬草採取…しっかり本人にも手伝わせてね?」 「「ハーイ‼︎」」 「…ふにゃあ~」 まだほうけてるな、ラオーガ。かくなる上は…おりゃ‼︎ 俺はラオーガの背中を優しくゆっくり撫でてやった! 「ふみゃ⁉︎に、兄ちゃん。そんなことされたら、雄でも変になっちゃうよ~‼︎」 「悪いな。そうでもしなきゃ目が覚めねえだろ。 そんな調子のまんまだと、一発で死角から襲うファングラビット達の餌食にされちまうんだぞ?」 「ふふっ!さあラオーガ。行きましょ?」 今、6人の若者がそれぞれ準備確認をした後、教会を離れてゲラルドを出発した! ラオーガは何故かライさんや俺と同じ刀を選んでいて、アイカは短剣でメイナは弓なのだが…孤の外側に刃物が付いている。なるほど、接近した敵をそれで斬り伏せるわけか! 「モンスター倒すぞー!」 「どんどん倒すぞー‼︎」 …俺達、別にいなくても良くね?このアイカとメイナだけでウサギ達とも問題なく戦えてるし、薬草採取とはぎ取り回収が何故かうまいラオーガを守れているようだし。 「レダ。これって俺達3人が別のモンスターを相手にしてても良くないか? 断然凄いじゃんかこの3人!」 「そうしたいけどそうも言ってられないかな、お兄ちゃん。ここでは私達が年上なんだから、しっかり見守らないとね!」 「そうだよナル兄ぃ?」 「そうだったな、2人とも…俺もどうやら油断してたみたいだ。 ラーナの獲物も、ちゃんと武器屋で手に入って良かったね!(ムチ姫の再来…)」 見るとラーナの手に、レダが昔愛用していた初心者用のムチが握られていた。 俺とレダ。そしてラーナは、新たな冒険者として活躍出来そうな3人を見守りつつも、自分達の依頼もこなしていく。 2人の娘達をライさんの所に送った後、俺達は国王様の所へと足を運んだ。 「よぉナルガス!」 「ジグルさん。こんにちは…ってあれ?スライム王さん達とゴブリン王も来てるのか。」 気のせいか、北のスライム王様の肩に小さい金色のスライムっぽい形が乗ってるんだが。まさか…な? 「ああ。今後少し森を切り開いて一つの大きな国家にするか、東西南北それぞれの治安の為に散会した方がいいかを意見し合ってんだと。 後は、イェルガー族達と同じく船を作ってまだ見ぬ土地に行こうかとも考えているそうだ。」 「うん。そうやって各地に広がって、未知の場所を探すのは良い事だと思う。 俺もこうして、あの砂漠地帯から戻る体験ができたんだから!」 一つの場所に大勢群がれば、また猫族でも別の種族でも必ず支配下に入れられてしまう。それならいっそ、それぞれの種族が治める国作りを共にしていけば良いんじゃないか? 「やぁナルガス達!」 「コウドル⁉︎」 俺達の後ろから、コウドルが話しかけてきた! 「何をそんな驚いてるんだい?一応わたしも1種族の代表で出席する為、またここに来たわけなんだが。」 「そ、そうだったのか。…ん?て事は、昨日と同じ話がまた始まるの?」 「いや少し違うぞ?ナルガス。全種族が集まってからの会議がこれから行われるんだ。ちょうどいいから、お前達も参加してくれ! あのルードスチームの子供らは明日、グラゼンドでの教習を済ませてゲラルドに帰ってくるらしいしな。」 あれ?やけに早いぞ?まぁ、早くに越した事は無い…か。 「全種族代表者の諸君‼︎そしてナルガス達、よくぞ来てくれた!これから大事な話をするので、この扉の先にある食堂へ来てくれ。」 「おっ!いよいよ種族会議の始まりか。行くぜ?ナルガス達‼︎」 「分かった!」 みんなで王様達が入っていった部屋に俺達も入ると、綺麗な純白に彩られた天井と壁紙、そしてモンスターの毛皮や牙などのオブジェクトが場所を多くとらぬよう、やや控えめに置かれていた。 「皆、忙しい所来てくれて感謝する。 そして、新たに立ち上がった国家の新国王…グラゼンド王・ヤハル!よくぞ参られたな。」 「き、恐縮ですね。(汗)」 えぇ⁉︎ヤハル王様も来てたのかよ! 「実は今、ナルガス達にも参加してもらった理由は他でもない。神様とも話がしたいのだ。」 「なるほど。分かりました!では、早速お呼びしますね?」 「うむ、頼むぞ。」 スキル:神々の智恵発動 「…はははは!全くお前は、俺を毎度毎度呼び出しやがって!まあこうして、全種族の顔ぶれを見る日をずっと待ちわびていたからな。だから、俺は満足だ‼︎」 「は!ははぁ‼︎」 全種族の代表者達は揃って、神に向かって慌ててひれ伏そうとしたが、神様はそれを止めた。 「ああ、今は俺の事でそんなにかしこまりすぎなくて良いからよ。それよりここに来させた理由を聞かせちゃくれねぇか?わかる範囲でなら答えてやれるぜ?」 神様の許可を得て、ドラルド王は発言をする事にした。 「仰せのままに。…実は私どもは今後争いを避ける為、全ての土地に散開して暮らせていけたらと考えておるのです。 その土地に移ることは可能でしょうか?そして…私達の世代から先の新たな世代は、戦争しないで済むのでしょうか?」 「………」 ここにいる全員、神様の言葉をただじっと黙って待ち続ける… 「…一つ目の質問についてから言うが、十分可能だ。今からその土地に暮らしている先住民達の長に、天使達を遣わしてその件を告げておこう。 そして、二つ目の質問だが…残念ながら戦争は起きる。」 「⁉︎」 「だからナルガス、お前に聞きたい。 実は今後もお前達が仲違いしないよう、毎日日々の糧となってる襲いかかるモンスターが生まれ続けるようにはするんだが、それ以外にも民が傷付かずに済む方法がもう一つあるんじゃねぇのか?」 「はい…神様。俺がいた世界には、[スポーツ]と言う娯楽があったんです。それを戦争の代わりに皆が勝敗をつけて、負けた国を勝った国が支えて強くして、また戦って互いを高め合う。 そんな歴史にしてはいかがでしょう?」 「スポーツ…スポーツか。いい案かも知れねぇな!お前達他の代表者はどうだ?」 「私どもにはその[すぽーつ?]とやらがどんなものかは知りませんが、殺し合いをしなくて済むんですか?」 「ああ。中にはズルをしたり悪さする奴も出るだろうが、そん時はそいつが反省できるように各自考えてやれば良い。 それでも聞かない時だけ、お前らの代わりに俺が天使達を通して俺が裁こう!」 そ、それはそれで怖いよなぁ… 「心配しなくとも、今を生きているお前らの世代でそんな未来が来ることはない。だから…ゆめゆめ忘れるな? 自身より劣ると思った相手を見下して喜ぶものにならないで、共に並んで支えになる者となれ‼︎ それが、俺がお前達に望んでいる願いだ。」 「は、はい‼︎」 神様の愛とは、こういうのを言うんだろうか。相手を裁く弱さしか持てない俺達に、あえてそうならないように諭すのだから。ここにいる誰もが涙を流す… 「安心しろ。俺は悠久の時を天界で過ごして見守り続けている…」 神様は俺達の様子を見て安心したのか、グラサンをとって優しい笑顔を見せながら天へと戻って行った… 「皆、ワシらは今神が言われた事を一切忘れたりせず、共に歩もうぞ…(泣)」 全員言葉は出せなかったが、誰一人異を唱える真似はしなかった。 そして、ここにいる全員がそれぞれの胸に神様の言葉を抱いて帰路につく中、俺だけがドラルド王様に呼び止められる。 「ナルガス、すまんがワシと二人で話をしてくれぬか?」 「…え?は、はい。ごめんレダ達、先に帰って食べててくれるか?」 「うん。寄り道せずに帰って来てね?」 「分かってるさ。」 レダ達を先に帰らせた俺を、ドラルド王様は玉座まで連れてきた。 「勝手を言ってすまなかったな、ナルガス。どうしてもこれだけは諦めたくない願いがあるのだ……どうか、国王になって欲しい。」 「えぇ⁉︎」 「ワシは、お前のその優しさと智恵のおかげで、今日までこのゲラルドの発展を見ることができたと思っている! だから、お前が嫁となる相手と結婚する時を図らい、ワシは王位をお前に譲り、この国を任したい‼︎」 「お、俺で本当に良いんですか?公務とかすっぽかす真似しかできませんよ?」 「最低限の把握と指揮だけをしてくれれば良い。そうすれば有能な士官達が、滞りなく動かしてくれるだろう。 今全ての種族を平等に見ることができる若者は、お前をおいて他にいない… だから、頼んでいるのだ。」 王様はまっすぐ俺の目を見て、俺の全てを知って任せようとしてくれている。 そこまで言われたら、断れないよな? 「…分かりました。俺のできる事全て、この国でやってみせます。 ただ、王政の事については無知ですので、度々教えてくれると助かります。」 「勿論だ。ワシは…とても嬉しい‼︎ ついに、願いが成就したのだからな!」 俺はここに、次期国王になる事を約束した。王様の期待に応えたいのもあるが、一番はやはり初めに神様と約束をした癒しと和み。 これが実現できる為にやれることは今後も続ていきたいと、ナルガスは今後気合いを入れて臨んでいく…
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