序章 転生サイコー!

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序章 転生サイコー!

 20XX年日本の某都市部、便利な文明社会によりスマホ一台だけで衣食住全てが得られる時代となった。  故に道行く人々は皆スマホを見ながら移動する、「ながらスマホ」が主体となり前方不注意で相手とぶつかりスマホを落としただけで殴り合いが絶えない…  そんな危ない時代になった原因は、先の世代にいた国をまとめるべき政治家が、己の保身のみに走り続けた結果だった。  第二次世界大戦と呼ばれていた昔の戦争後に、寄生虫の如く日本を支配した某国達に乗っ取られたが為に…  それから月日が流れ、野党議員とマスコミメディア等から情報操作を受け続けた一般国民を煽動し、暴動が起きて国民達を守っていた自衛隊やようやく国民のために立ち上がった若手の国会議員の処罰するという、愚かな真似を先代の日本人達が犯してしまった。  その後この国の法律も、雪崩のように次々と野党派閥によって崩された。  銃刀法違反?何それ?といった具合に、よその国の法律で無実の日本人から一人残らず処刑されていく、そんな時代となったのだ。  そして現在、無法国家と成り果てたこの国でもスマホのみならずタブレットも顕在してはいた…が、それは楽しむためではない。  何故なら、その端末こそが家であり財産なのである。  そのため仕事探しや借金返済、SNSを通じて嫌な現実から目を背け続けたい人間だけしか、主に残っていなかった。  ついには、武器の購入もスマホ一台で購入は可能となる。  そんななかでもこの都市部で、一人の男はスマホを見ずに周りに当たらぬよう気を付けて歩き、とある場所へと日々足を運んでいくのである。    男の名前は皇(すめらぎ)なる…30代でバカがつくほどの猫好きであり、今正に彼の目的地「猫喫茶」に直行していた。  「さあ、今日もかわいい猫ちゃん達に会いに行くぞぉ~!白い毛並みのミーラちゃんを、今日もいっぱいもふっていきたいなぁ。」  周りの人間はスマホしか見てないので彼の様子も気にかける事は一切無いが、おそらく見ている人がいたら誰もがひくほどの気持ち悪い笑顔を見られていたことだろう……    そんな時、少し離れた所から自動車に乗って爆音を流し、銃を乱射しまくるバカどもがやって来るのが見えた。  なるはもちろん、周りの人間も流石に煩わしそうにその方向を見て顔をしかめぶつぶつ文句を言いながら、再び画面に顔を戻す。  今や警察は取り締まる事はなく、権力者の護衛のみを役目と義務付けられているので、一般人の守護はもはや無い。  [自分の身は自分で守る]事が当然になっているので、死者が出ても無関心なのである。  特殊清掃員が作業用の車できて、死体の後始末する光景が見慣れてしまうほどの異常な国だというのに、別にもう構わないとでも言うように誰も声を上げず、人々は勝手に生きていた。  「いつ見ても気分が悪い光景だよなぁ…昔の良い指導者が全員殺されてからは、保守派のじいさん議員達のせいでまともな職についてる人は誰もいないし、皆の目は死んでる。  こんな息がつまる外の空気で過ごすより、愛しい猫達と一緒に過ごせる世界が良いよ…」  一人でそんな呑気な考えをしながら歩いていると、一匹の黒いのら猫が道の真ん中で毛繕いをしながらくつろいでいた。  彼はその様子を見てモフモフしたい一心で突っ込んでいきたい衝動を抑えつつ、のら猫に向かってゆっくり歩いていった。  猫も気配を察して体を起こしてなるを見据える…のら猫が怯えて逃げないように彼は優しく猫の頭から背中、そして腰を優しくなでていくので、のら猫はすぐになつくようになった。  彼が誰も通らない道路の真ん中で猫と戯れている間に、先程の銃を乱射しながら走っていた車が猛スピードでやって来た。  なるとのら猫は同時に顔を上げた頃には避ける余裕はみるみるなくなっていたので、なるは恐怖で動けなくなった猫を両手で掴み安全な道路の端に行こうと走った。  自分の体が車にぶつかる前に手を離し、無事にのら猫を逃がすことはできた。 だが…  車の衝突により四肢の関節はあらぬ方にひん曲がり、体の原型はとどめていなかった。  更には車でひいた連中が戻って来た瞬間、暴言を吐きながら拳銃を彼の眉間に撃ち込んだ後すぐに逃げて行った。  事の成り行きを見ていた人達の中には救急車を呼ぶもの、見なかったことにしていつも通りスマホを見ながら移動する者、ひかれた彼をスマホで撮影し「拡散してね!」って言いながらスマホ画面をクリックするバカ者もいた。  もはや人間として彼らを見れないと、このとき死ぬ前になるは思った。 次第に意識が無くなるなかで、近づいてくるのら猫の悲しそうな顔を見た彼は、初めて神様という存在に心の中で願う…… 猫と暮らせる世界がもしもあるなら、そこで生きたいと…  暗闇にあったなるの意識は光に包まれ、ふと目が覚めた。  「ここがひょっとしてあの世?」  少し寝ぼけた状態で、のそのそと立ち上がり周りの様子を見てみた。 そこは白一色だけが無限に広がる空間があり、その中で上に続く階段がのびていたのである。  なるは恐る恐る階段を登って行き、上にたどり着いた先には大きな円柱が左右にあり、石畳が広く敷かれていた。  その中央に玉座らしき椅子があったのだが、そこには似つかわしくない全身黒のスーツを着ていて黒のサングラスをかけ、タバコをふかしているおっさんが目の前にいたのである。  「おう来たか、待ってたぞ。」  どうやら、なるがここに来ることを把握していたようだった。 訳がわからずなるが戸惑っていると…  「ああ、すまんすまん。俺はこんななりをしてるが一応神様だ。  ここは死んだ人間の魂が集う場所ではあるんだが、お前の暮らしていた世界とは別の次元にある神界なんだよ。 ちと、お前さんとこの世界にいる神様に無理を言って呼ばせてもらった。」  そう言って説明してくれたんだが、なるはもちろん何故そんな事になったのかが分からず、黒服の男…もとい神様に聞いてみた。  「何故俺がここに呼ばれる事になったんですか?俺は猫が好きなだけが取り柄の人間ですよ?」 神様は満足げにこう答えた。  「その猫好きのお前さんだからこそ頼みたいから、ここに呼んだんだよ。 ちと、猫達が暮らす世界に転生させたいんだわ。」  「………Σ(゜Д゜)」  「俺が猫の世界に転生?夢でもなんでもなく?」  「?そうだ。」  「………キターーーーー!!」  神様はビックリしてずっこけていた…転生と聞いてこんな反応されたことは、一度もなかったためである。  「お、落ち着け。興奮するのは分かったがとりあえず説明を…」   「俺本当に、猫達の暮らす世界に行けるんですよね?夢じゃないんですよね!?ああー!こんな嬉しい事があるなんて信じられない!転生サイコーーー!!(ああ、だから話をき)人が嫌いになって嫌な思いして来た甲斐があったってもんだ!その世界に行ったらとことん撫でまわしてモフモフして癒されてそれから…」  「話を聞かんかゴルァーー!!」  ドスを聞かせた神様の一声に興奮が一気に無くなり、ビクッ!!っと体がまっすぐに固まって神様から説教を受けるなるであった……
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