プロローグ

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これだけはっきりと音声を録音できるのは,同じ放送部員しかいない。 「えっ?心当たりってダレ?」 「藤沢(ふじさわ)クンだよ。藤沢(しゅう)クン!あたしと同じ放送部員だし,あの放送の時にも音響(おんきょう)室にいたもん。多分その時に録音したんだよ」 真希は即答した。もう"推理"ではなく,ほとんど"確信"に近い言い方で。 「ええ?でもこのアカウント,藤沢のじゃないよ。違うんじゃない?」 絵里は反論した。「彼がそんなことするワケない」と言いたかったらしい。 真希と絵里,そして秀の三人は小学校入学の頃からもうかれこれ一〇(じゅう)年の付き合いで,二人とも彼の性格はよく知り尽くしているのだ。 それに三人ともSNSをやっていて,三人が三人ともアカウントを相互(そうご)フォローし合っていたりするのだ。 「多分コレ,あちこちでさんざんリツイートされまくってるよ。それがたまたま絵里のアカに流れ着いてきたんじゃないの?だから,最初にアップしたのは藤沢クンで間違いないよ」 「……じゃあ,本人に直接確かめてみる?」 絵里がチラッと教室の引き戸の方を見た。ちょうど一人の男子生徒が大欠伸(あくび)をしながら,「おはよ」と登校してきたところだった。 身長は一七〇センチ台後半,ヒョロっとした体型で髪は少し茶色っぽい。顔はなかなかのイケメンで,女子受けするシャープな顔立ち。……彼がウワサの藤沢秀である。
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