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十五歳になったばかりの少年、黒羽出雲は嘆いている。泣いて泣いて、涙が枯れて出ないと思っても涙が流れるくらい泣いていた。水分を長らく摂取しておらず涙を流しすぎて脱水症状になりかけるも、なんとか脱水症状になることはなかった。涙を流していたその顔は酷くやつれており、髪はボサボサで背中までかかる程に長く伸びてしまい、栄養不足のためかその身体は酷く痩せ細っていた。
「俺はもう疲れたよ……もっと幸せに生きたかったな……」
出雲はそう呟き、地面から立ち上がって当てもなく歩いていく。出雲が着ている服装はどこかの中学校の制服だか、その制服は皺だらけで泥の染みが酷く、腕の部分や膝の部分が擦り切れているようである。
出雲がふらつきながら歩いていると、河川敷にある小石に躓いて倒れてしまった。やっと死ねると靄がかかる頭で思いながら倒れ続けているが、出雲の意識が消える様子はなかった。
「死ねない……やっと死ねると思ったのに……」
出雲は目を開けて周囲を見渡すと、先ほどまでいた河川敷ではないと気がついた。出雲はここはどこだと思いながら立ち上がると、横に生えている木に寄りかかる。
「ここは一体どこなんだ……俺に何があったんだ……」
痩せ細った身体に鞭を打ってとりあえず歩こうと思い歩き進めると、河川敷とは違って周囲に草木が生えているため、ここは森の中なのだろうと推測していた。
「ここは本当に日本なのか? どうしてこんな場所に俺がいるんだ……」
訳も分からない現象が身に起きたので、出雲は頭を抱えながら理解に苦しんでいた。それでも前に進もうと草木を掻き分けて進み続けると、目の前に二人の女性が銀色の剣を右手に持って狼のような獣と対峙している姿が見えてきた。
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