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「ママ!これ見て」
学校の掲示板の前で女子たちが騒いでいた。
何事かと見てみると、オーディションのポスターだった。
スマホに表示したオーディションサイトの画面を目の前に突きつける。
花を活ける手を止めて、ママはスマホを受け取った。
「これって……葵ちゃんが受けたアイドルグループのオーディション?」
「そう!てゆーかその姉妹グループ。それがここにできるんだって!」
「へえ、すごいじゃない。
でもこっちの国の子じゃないとダメなんじゃないの?」
日本人学校の掲示板用なのか、ポスターは日本語だった。
オーディションサイトは現地語、英語、そして日本語のページがあった。
つ、ま、り、日本人も応募していいってことだ。
「大丈夫だよ。ねーママ、あおい受けていいでしょ⁉︎」
「こっちの言葉話せないのに大丈夫なの?」
うーん。それは確かに不安。
どうやって仲良くすればいいんだろう……。
でーも、
「なんとかなるなる!」
ママは観念したように微笑んで、優しくスマホをテーブルに置いた。
「じゃあ、受けるだけ受けてみたら?」
親の同意が必要とは言え、反対されても絶対に受けていた。
でもママの後押しに、もう合格通知を受け取った気分になった。
そして、センターポジションに立っている自分を想像してニヤけた。
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