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「レッスン大変そうね」
車の中でママはさほど心配していないように言った。
ママは、辞めればいいと思ってるんだろうな。
専業主婦とはいえ、毎日の送り迎えが大変なのはわかってる。
学校からレッスン場、レッスン場から語学学校、語学学校から家まで。
「辞めちゃおっかなあ」
ママに今まで見たこともないような視線を向けられて、ちびりちびり食べていたおにぎりがゴクリと喉を通る。
「辞めちゃったら……今までの努力は水の泡ね」
「だって、ママも大変でしょ?」
「……大変よ。でも葵ちゃんの夢が叶うお手伝いだと思うと楽しいわ」
涙で、語学学校のテキストの文字が滲む。
「もっと楽しいと思ってた。もっと……」
「楽しいわよ。きっとステージは。
そのためのレッスンでしょ?」
迷いながら、日々は過ぎていった。
朝起きて、学校に行って、学校が終わると鬼のようなレッスンをして、語学学校に行って、帰って、シャワーを浴びて、軽めの食事をして、レッスンの復習をして、寝る。
迷いながら、辞めれずに、出来る事を繰り返しやって行く日々。
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