おもてなしの樹

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 秋になって、花の咲いていた枝には実がなりました。ぷくりと丸い、美味しそうな実です。 「おや、こんな所に美味しそうな実のなっている樹があるぞ」  そこにやって来たのは、一匹のリスでした。リスはちょろちょろと枝の先まで行って、実をもぎました。樹はリスに思い切って声をかけました。 「やあリスくん、ようこそ。ぼくのうろの中で休んで行かないか?」 「え? いいのかい?」 「もちろんだよ。その実を食べて、ゆっくりして行きなよ」 「じゃ、お言葉に甘えようかな」  リスはちょろちょろとうろに入って行きました。中は苔の絨毯が敷きつめられていて、ふかふかです。 「うわあ、すてきな場所だなあ」  リスはさっそく、実を食べ始めました。 「美味しい! とっても美味しいよ」  あまりの美味しさにリスは夢中になって、あっという間に実を全部食べてしまいました。お腹いっぱいです。 「……なんだか眠くなっちゃった」  さやさやと、優しい葉ずれの音が聞こえて来ます。リスクはこてんと横になると、そのままくるりと丸くなって眠ってしまいました。くうくうと、小さな寝息が聞こえます。  樹はリスがゆっくり眠れるように、子守唄のような葉ずれの音をずっと奏でていました。
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