おもてなしの樹

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 それから──  また、何年も時間が経ちました。  世界は全て焼き付くされ、樹の周りには何もなくなっていました。樹を訪れる者は、人間も動物も、もう誰もいなくなってしまいました。 (でも、寂しくはないよ)  樹は思っていました。 (ここでぼくがまだ立っていられるのは、今までもてなしたみんなのおかげだから)  樹は、今までもてなしたみんなのことを思い返していました。そして、いつかまた、誰かをもてなす時を夢見て、日々変わらずそこに立っていました。  その時。  空から、ピカピカと光る船がやって来ました。船は樹の近くに降り立ち、中から銀色に光る人が出て来ました。  この人は、他の星から来た旅人でした。戦争で滅びた星を見つけ、調べてみようとやって来たのでした。 『おや、驚いたな。滅びてしまった星なのに、こんな大きな樹が生き残っているなんて』  旅人が近づいて来るのを見て、樹は自分の体を確かめました。久しぶりのお客様です、ちゃんとおもてなししてあげないと。  焼けてしまった葉や幹は、ほとんど元のように治っています。いい香りはまだ出せるし、樹液も出せそうです。 (さあ、いらっしゃい、お客様)  樹はさやさやと葉ずれの音を奏で始めました。 (小鳥さんや、リスさんや、ウサギさんや、たくさんの動物達や人間達が、みーんなよ)  子守唄を思わせる葉ずれの音に、何となく旅人は眠気を感じました。旅の疲れが出たのかも知れない、と旅人は思いました。そのまま誘われるようにうろの中に入って行く旅人を、樹は喜んで受け入れました。  旅人は、他の動物達や人間達と同じように、樹のうろから出て来ることはありませんでした。  樹は再び、ここで静かに次のお客様を待ち続けるのでした。
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