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親友の恵美子が死んだと連絡が来たのは、冬が開けようとしている、3月の昼下がりのことだった。
「家で、首吊ってたんだってよ」
そう告げた友人のことばに驚き、私はあやうく、携帯電話を取り落としそうになった。手から離れた携帯電話が、地面にたどり着く前に、なんとかもう一度手中に収めることができて、私は思わずほっと、息をついた。まだまだ捨てたもんじゃない。
「ああ、すまん」
そして、何事もなかったかのように、友人に返事を返した。
「通夜と告別式は、今週末の土日だってよ。場所は、また連絡する」
「ああ、ありがとう」
私はそういって、電話を切った。友人の松原と話をするのも思い返してみれば、かなり久しいことであった。ふと、死んだ恵美子のことを思い浮かべた。そうだ、あいつと最後に話をしたのも、いつのことだっただろうか。
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