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「いや。正解ですよ。俺がまた色々
考え込んじゃったりすんのわかってたんだろ。
忙しい時期だしな。
こんなの事前に知ってたらドキドキしちゃって
寝られなかったかもしれねえし。」
そう言いながらまた写真へと目をやると
ふっと笑みを浮かべた。
「親父がコーヒー好きなんて知らなかったなぁ。。
食に煩いとか。思った事も無かったよ。
俺がガキの頃は全然家に居なかったし
一緒に食卓囲んでも俺も親父も黙って
黙々と飯を食う。みたいなさ・・・。」
そうだろうね。
俺もそういう印象だったし。
「コーヒーの感想。色々言ってくれたんだけど
とても的確だった。参考になるポイントも多くて。
涼はお父さんに似てたんだね。
DNAってホントに受け継がれるんだなって
思ったよ。」
そうかな。と涼はくしゃくしゃ髪を掻き混ぜると
恥ずかしくなったのか腕を伸ばし俺の首に
絡めてきた。
可愛い。
腰へ腕を回し 持ち上げて腿に跨らせるように
座らせる。
ぎゅっと抱きついてくる体を抱きしめると
ほっと生温かい息を吐き出した。
「ホッとした?」
「・・・うん。でもなぁ・・。」
ん。
体を少し離して顔を覗き込む。
「どうしたの?」
「せっかくのチャンスを無くしちゃっちゃったじゃ
ないですか。逆になんか声かけづらいって
いうかさぁ・・。」
ああ。それなら・・。
説明しようとした時カウンターに置いてあった涼の
携帯が鳴る。
ん。と視線を送り 涼は携帯を手に取ると
指を動かしてまたピタッと固まった。
「・・・新。」
「ん?」
ほら。と画面を見せてくる。
「・・・母ちゃんから。正月のおせちの目玉に
新のローストビーフ持って来いって。。。」
ああ。
うん。
「さっき千葉さんに追加発注しておいたから
大丈夫。」
ニコッと微笑みかけると 涼はぽかんと口を開け
みるみる顔を顰めると ぎーっと俺の頬を
引っ張った。
「だーーかーーらーーお前はーー言えって・・・。」
「い・・言おうとしてたでしょ。」
涼の手を頬から離してすりすりと触っていると
ぎゅっとしがみついてくる。
「・・・新。」
「ん?」
「お前ってさぁ・・・。」
うん。
「いい嫁だな。」
「いい嫁でしょ。」
同時に言って くすくすと笑いだし
一頻り笑いがおさまると 顔を近づけ
そっと唇を合わせた。
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