CEO

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「では。会議を始めます。」 涼はコホンとワザとらしく咳払いをして スプーンをしっかりと握りしめた。 出会ってから今までずっと試食会は続いていて。 1ヶ月に1回。 ランチ用の新作を決める為に涼にお願いして 味見をして貰ってる。 いくら言っても対価を受け取ってくれないから 業を煮やし こう提案した。 「涼。これはね。会議なの。俺の店の経営企画会議。 コストや価格、手間を考えつつ ベストな商品をお客様に提供する大事な会議。 つまり。涼はこの時だけうちの店のCEO。」 「CEO⁉︎」 ポッカリ口を開け そう繰り返すと コクンと首を傾げる。 「・・って何ですか。」 「最高経営責任者って事。」 えー。 仰け反り 頭をカリカリと掻いた。 「責任重いって。そんなの。俺には無理ですよ。 あなた。ただの一介のダメ営業マンだぞ。 ちょっと味覚が人より敏感なだけでさぁ。」 「そう? じゃあ この間 俺が熱出した時 なんで店にある物使わなかったの? 瞬時に在庫管理を頭に思い浮かべなかった? 店の物を使えば 利益無しの無駄遣いになるって そう思ったから自腹で買い物してくれたんでしょ。」 微々たる点でもそこに頭がいくかどうかで大違い。 涼は自分が出来る事はみんな出来ると 思ってるけど そうじゃない。 気づいて欲しくてね。 それに俺にとっても 涼がうちの店に関わって くれるのは利点。 柔軟な視点に発想。仕事柄か計算も早く知識も豊富。 最善を提案して思案し 選択出来る判断力。 作る側はいい物を作りたいから コストを かけ過ぎる傾向にあるけど 涼はそれを ちゃんと止めてくれるし。 それも ただダメ。じゃなくて じゃあこうしたら。 なのは長い付き合いでよくわかってる。 人の意見も取り入れつつ 自分の考えも提案出来る。 で。その上で 誰よりも鋭い味覚の持ち主。 こんなの。 才能でしょ。 ちゃんと金になる才能。 それをわからせたい。 でも 涼は顔をしかめる。
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