CEO

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「檜垣です。うちの叶がお邪魔したそうで お忙しい中 時間取らせまして。 ありがとうございます。」 涼は限界まで責め立てられ まだぐっすりと寝てる。 今日は珍しく水曜定休日と祝日が重なり 起きるまでそのままにしておくつもりだった。 久しぶりにデート出来るって喜んでたし ゆっくり休ませてからね。。 その前に早速 千葉さんに切り落としを回して 貰おうと電話をかけ まず対応して頂いた礼を言うと くすっと笑われる。 「細かい話は内緒にしてくれと言われたんですが あまりに一生懸命だったから話しちゃいますけど。」 え。 何だろう。 「あ。はい。あの何かありましたか。」 「いやね。彼は凄いですよ。肉の知識。 相当勉強されたんですかね。 下手な肉屋よりあるんじゃないかなぁ。 それが全然知ったかぶりじゃなくて 質問全部が的確でびっくりしました。 普段は食品メーカーの営業さんなんですってね。 それにしたって なかなかあそこまではねえ。 何より 檜垣さんにいい物を使わせてやりたいって 熱意がね。ヒシヒシ伝わってきましたよ。 店は小さいし一人でやっているからなかなか難しいが 腕はいいし 仕事に対してとにかく誠実だから 今は無理かもしれないけれど 必ず近い将来 量を頼めるようになりますからって。 お約束します!だから何とかって深々頭下げてねえ。 繋ぎ止めようとしていたんですかね。 たかだか肉屋如きに そんな事普通出来ませんよ。 これなら うちの肉も大事に料理して貰えるなと カミさんと話してましてね。 切り落としを叶さんには提案しましたけど ブロック。お試しで切り落とし価格で卸しますから。 軌道に乗ったら 通常に戻して下さい。 叶さんの話が本当なら きっと大して待たないで 済みますよね。」 携帯を持ったまま固まる。 そんな。。 涼がそんな事・・。 昨日聞いていた話と全然違う。 俺の為にそんなに必死に。 頭まで 下げてくれていたんだ。。 きゅっと胸が苦しくなり 鼻がツンと痛くなった。 ・・もう。 どんだけ涼に泣かされるんだろ。 今まで 何があっても絶対に泣かなかったのに。 「あ・・ありがとう・ございます。 必ず。お約束します。ありがとうございます!」 携帯を持ったまま 頭を下げると じわっと浮かんだ涙で床が滲んで見える。 その時 二階から 「あらたぁ・・どこぉ・・。」 と甘える声が聞こえてきた。 自慢げに話した事が 実際の話の半分にも 満たないって。 ホントにもう。。 うちのCEOは。。。 グッと涙を堪え 来週からの取引をお願いし 「はい。では宜しくお願いします。 本当にありがとうございます。」 電話を切って ふう。と深く息を吐く。 何も言わないでおこう。 気持ちには結果で応えないとね。 こんなに。信じてくれてるんだから。。 必ず。 新はパンパンと頬を叩く。 「あらたぁ・・」と更に甘えた声音で呼ぶ 恋人の元へ 足早に階段を登って行った。
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