帝王

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大量の玉ねぎの皮を剥き カットし始めると ドアが開き リーマンらしき人が一人 店の中に入ってきた。 恐る恐るとはこの事かな。 キョロキョロと辺りを伺い 俺に視線を向けると ペコリと頭を下げる。 あれ。この人。 もしかして。 もう閉店と言いかけたのを止め カウンターを指し示す。 「どうぞ。」 切った玉ねぎをボウルに移し 手を洗い コースターを滑らせると 男性はそろそろと 口を開いた。 「すいません・・。あの。叶はまだ・・。」 ・・やっぱりそうか。 涼を訪ねて来そうな人は限られている。 「ええ。取引先のパーティーで 帰りは 遅いみたいなんですが。 」 カウンターにちょこんと座った真面目そうな 眼鏡の男性。 この間の話に出てきた涼の同期の人。 服部さん。。だったかな。 総務と涼が言っていたから家も知っていたんだろう。 言われて 何か思い当たったのか ああ。と頷き 「そ・・そうでしたね。忘れていました。 電話も繋がらなかったので 直接来れば もう帰っているかと思って。。」 慌てて頭を下げる。 「もうすぐ帰ってくると思いますから 待たれますか? 店は閉店しますので 気にせず お待ち頂いて。」 「え。。あ。いえ。でも・・。」 躊躇する様子を眺め 微笑みかけると 少し気が楽になったのか 「じゃあ。。すいません。お言葉に甘えて少しだけ。 あまり遅いようなら失礼しますので。」 そう言って また頭を下げた。
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