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備忘録3
「帰るんだ、もう」
「うん。ここでやるべきことは済んだからね」
「そうか。寂しくなるな」
「大丈夫だよ、これからも何も変わらない」
「むしろ、わたしがここに居る必要性もなかったから」
「そんなことはないだろ」
「…………ううん」
「助かってたよ。ニアが居なかったら、どうにもならないことだってあったじゃないか」
「そう、かな。ありがとう」
「これからも、たまには顔見せてくれれば」
「それは駄目だよ。無理なんだ」
「君のこと、好きだよ。死ぬほど」
「死んでも」
「だからこそ」
「仁くんの幸せを願うなら、ここでお別れしなくちゃならない」
「どうやったって、君は人間なんだから」
「いつまでも一緒には居られない」
「……。逢えてよかった」
「けど」
「君の邪魔にはなりたくない」
「だからね」
「人として生きることを、遂げてほしいんだ」
「それは、分かるけどさ」
「二度と会えない訳じゃないよ?」
「百年くらいは、会わないでいるだけ」
「君が死んだら、迎えに来るから」
「それまで、」
「……それからが、あるなら」
「それは、屹度」
(人であることを諦めたあとのことだから)
「ニア?」
「……、……。少しだけ、こっちにおいで」
「ん……」
(…………。初めてのこと、いろいろあったね。だから)
「、っ。」
「良い反応。そういうところ、可愛いと思うよ」
「からかうなよ」
「……本当に用も済んだから、帰るよ」
「生きていたら、また逢おうね」
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