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プロローグ
──前略。私は普通の人間である。頭脳も身体能力も飛び抜けたものを持ってはいない、ごく平均的な人間だ。
今日までの人生、悪行を働いたつもりもなければ、かといって聖人のような素晴らしい善行を重ねた記憶もない。
とてもありきたりで、字に興せばつまらないだろう人生。燃え尽きるように走り抜けていくわけでもなく、泥の中をもがくような不幸に見舞われてもいない。
歩んできた道程には、ドラマチックさの欠片もない。掃いて捨てる程に溢れ返った雑魚のひとりがこの私、小鳥遊雲母だ。
そんな有象無象の私は今、危機的状況にある。平凡らしくありきたりな言葉で形容すれば、命の危険である。
どう危険か? おおよそここまでの人生で築いてきた常識では到底図りかねる、異常事態だ。
…何せ、私は今。和式便器から這い出た腕によって、身体を引きずり込まれそうになっているのだから。
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