和装パブ シムティエール

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「いらっしゃい。あら、お兄さん、初めて?」 と40代位の愛想のいい和服姿の女性が微笑む。 「お好きな席へどうぞ。」 と言われたが、その店はカウンター席が三つあるきりだ。しかもカウンターに向かって右端の席には、すでに白髪の老人が座っている。彼は初夏だというのに真っ黒いマントのようなものを羽織り、熱燗で焼き魚をつついていた。  俺は真ん中の席を空け左端の席に座ろうとした。 「おい。ワケェの。ここに座れ!」 と、急に老人は俺の右腕をつかみ真ん中の席に座らせた。 「あら、シューちゃん。お客さんに乱暴しないで下さいね。」 カウンターの中から、女将さんが俺に冷えたおしぼりを手渡しながら、シューちゃんという老人を可愛い目で睨みつけた。
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