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其の零 不良少年達のケース②
昼下がり。
私は学校をサボって近所の公園のベンチで読書に耽っていた。ポカポカと暖かな日差しが降り注ぎ、時折さわやかな風が駆け抜ける。
昔から、この場所が好きだった。
一人の時も、友達と一緒の時も、この場所はいつも優しく迎えてくれた。高校生になった今でも、時折顔を覗かせてはひと時の時間を過ごした。
何の変哲もない公園だけど、私にとっては特別な場所。
ザアアァァァァァァ...!!
一陣の強い風が吹いた。スカートがばたばたとはためくが、周りに誰も居なさそうなので放っておく。ちらりと見えた自分の白い太ももに、うっすら青白いアザが出来ているのを見つけて少し嫌な気分になる。
私は開いていた本をぱたんと閉じ、空を見上げる。綺麗な青空に一筋の白い流星が尾を引いていた。
「ごめんね………」
誰ともなく呟く。その声は草木のさざめきにかき消されていく。
ザアアァァァァァァ...!!
また一陣の風が吹く。
背後に何かの気配を感じて、振り向く。いつの間にやら、そこに一人の少年が立っていた。
「あぁ、来ちゃったかぁ…。新聞見たよ。あなたがやってくれたんだよね、あれ?」
少年からは何のリアクションも帰ってこなかったが、構わず続ける。
「初めて会ったときは驚いたけどさ、いや、今も驚いてるんだけど、本当にあるんだね。都市伝説ってやつは」
少年は何も返さない。
「…分かってるよ、そういう話だもんね。私だけ約束破るわけにはいかないもんね。でも今日かぁ…。ねぇ、もう少し、待ってはくれない?」
相変わらず、少年は何も言わない。答えない。
私はふぅ、と一息ついて精一杯の笑顔でこう言った。
「それじゃあ、優しくしてね?」
その瞬間、少年の口角がぐにゃりと釣り上がった。
それは、何時の時代からか語られ始めた都市伝説。
どこからともなく現れては消え
呪い呪われた者をもろとも食い尽くす
白髪の少年
その都市伝説の名は...「蠱毒な少年」
了
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