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「なるほど。アニキの言いたい事は分かった。しかし……」
正直、俺の心は揺らいでいた。
総長になれる幸福と……
アニキを差し置いて総長になる戸惑いと……
正直、総長にはなりたい。
男として、ヤクザをしている以上、頂点を目指したくなるものだ。
しかしアニキには返しきれない程、大きな恩がある。
クズ同然の俺を拾ってくれたのもアニキだし、失敗をやらかした時いつも助けてくれたのもアニキだ。
そんなアニキの座布団を越えて、自分が上に立つなんて……
この2つが重なり、せめぎ合っていた。
「いいんだ。俺は今後も若頭としてお前を盛り立てていく。実は根回しも済んでいるんだ」
「ただ」とアニキはいい、申し訳なさそうにしながら話を続けた。
「お前には申し訳ないが、この時に総長になるということは、侠虎会やエンジェルとも戦わなくてはいけないという事になる」
「……別にいいぜ。望むところだ」
俺は俄然、やる気を出した。
望んでいた事が実現しようとしていたからだ。
エンジェルとの戦いを………
身体が漲り、燃える俺を見てアニキはホッと安堵を浮かべた。
「その意気だ。だがお前は“滝ノ瀬の虎”だ。虎のままではいけない。ボスになるのなら百獣の王でなくてはな」
そう言うとアニキは胸ポケットから青い液体の入った小瓶を取り出した。
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