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隠された道
後ろは壁でもうこれ以上逃げ場はない。目の前には突然変異のオークの赤い目が、雫と睨みあっていた。
(ヤバイな勝てる訳がないし何ともならないな……)
どこからともなく、いや雫の頭の中に声が響いてきた。
ーー『お主はよわいのぉー。わらわが助けてやろうか?動けるようにしてくれるなら助けてやるぞ』
「助けてくれるって言ったってどこにもいないじゃないか姿を表せよ」
叫んだからか、オークの棍棒が思いっきり降り下ろされる。雫は、慌てて左横に飛びなんとか交わすと壁に穴が空いて奥には何やらまだ先がある感じがした。
『まあ待て動けんと言ったじゃろ。お主はラッキーじゃの。そこの壁を壊せと言おうと思ったら壊れたわ。そこを通ってこちらに来るがよい』
「そう言われてもオークが……しかもあんた誰だよ声から女だとは分かるけども」
『うるさいわ、男ならガタガタ言わずにさっさと来るがよい。小さい事気にしておるとハゲるぞ』
「うるせぇー」
ニヤリと口許が緩み、雫は、覚悟を決めてオークと対峙する。さっき左に飛んだから右に飛んで、さっきの位置に戻ろうと考えた。穴の通路はどうやらオークが入れるようなサイズではなさそうだ。
再びオークから棍棒が降り下ろされる。すかさず右に飛びなんとか雫は、回避し通路に入る事が出来た。オークは何とか雫を出そうと片腕を突っ込むが、奥の方に入れた為に届かなかった。
この通路は一体何なんだろうか?隠しダンジョンか何かか?そんな事を考えるもさっきの声の主は返事がない。
「おーいここは何なんだよ」
声に出してみるも返事がない。仕方なく荒れた息を整えながら一本道の奥の方に向かって歩き出した。
一番奥に広い広間があった。なんとそこには、鎖に繋がれた、黒い魔方陣の真ん中に立たされた高校生位の少女がいるではないか。
『ようやっと来たか、待ってたぞ、お主はモンスターを使役出来るんだろ、わらわはモンスターではないが使役してここから出してくれないか』
「また頭に話しかけてくる。喋れないのか?」
『封印されておるゆえ話ぬ、テレパシーで声を届けておる。契約さえしてくれたら自由になれる』
魔方陣の少女を見るとかなり綺麗だ。真っ黒の髪の毛が腰ぐらいまで真っ直ぐにのびており目は閉じているが、唇も小さめで薄い唇が一文字に結ばれている。かなり小顔で息を飲む美しさだ。真っ黒な膝丈のワンピースに黒のパンプス全身真っ黒だ。肌は血流が通っていないのか、真っ白だ。
話し方が和服姿が似合いそうだから和服の女の人を想像していただけに雫は、少女を見てびっくりした。
(封印されてるって事は襲われたりしないのか?)
『大丈夫じゃ、襲ったりせぬ。頼む助けてくれ』
「どうしたらいいんだ?」
『鎖に触れてくれ、そうすればお主の力でわらわと契約が交わされ使役する事が出来る。』
そう言われ黒い魔方陣に近づいて行くと、魔方陣は黒から赤に変化し、雫が鎖に触れると鎖は弾けとんだ。すると少女はゆっくりと目を開けて口が動き出した。
「助かったぞ、わらわは、破壊の堕天使悪魔べリアル助けてもらい封印を解いて貰った為、お主を主にし助けようぞ」
そう言いながら赤い魔法陣にべリアルの身体が消えて行った。
(とんでもないものと契約してしまった……)
(悪魔って呪われたりしないよな……)
(まあ助けてくれるならあの豚野郎をなんとかしないとな)
そんな事を考えながら再び入り口に向かうのであった。
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