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そう言って起き上がろうとする私をお母さんは制止した。
「…奏くんは、まだ目を覚ましていないみたい。別の部屋で治療中よ。あなた達意識不明の重体だったんだけど、なんとか命はとりとめて…!」
そう言って泣き出す母の顔を、私はなにも言えずに見つめていた。
そして、力尽きたのか私はまた眠ってしまった。
遠くで誰かが呼んでいる。
どこか懐かしいような、愛しい声。
「…あかり」
「…うぅ…ん?」
「燈、起きて」
「…ん、かなで…?」
「そうだよ。ほら起きて、燈」
目を閉じていても辺りが明るいことがわかった。
そよそよとした風が肌を撫で、葉擦れの音が聞こえている。
ここは、病室じゃない…?
目を開けると、そこに広がっていたのは壮大に広がる青い空。
ゆっくりと流れるいろんな形の白い雲。
起き上がってみると、青々と茂る芝生が広がっていた。
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