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「…わかったよ、うるさいなぁ~」
そう言って渋々また渡り始めた時にはもう遅かった。
乗用車がスピードを緩めることなく、むしろ加速して近づいてきていた。
その存在に気づくことなくむくれた私。
それに気づいた奏は、目を見開き、咄嗟に叫んだ。
「燈、危ないっ!」
そう言われて後ろから抱き締められた私は、その直後に感じた強い衝撃とともに突き飛ばされた。
その瞬間はまるでスローモーションのように感じた。
宙に浮いた身体。
強く抱き締められた感触。
ブレーキの音を響かせたまま突っ込んできた乗用車。
驚き、怯えた顔をした通行人。
そのすべてがゆっくりゆっくりと時を進めていく。
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