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この目の前に居る男は父親…、なんだろうが〝お父さん〟とは呼んだ記憶は無い。
年に数回交わす会話も二往復すれば長い方だ。この男から自分への愛情を感じないし俺も心を閉ざしてしまっている。
自分の家族は母親だけだ。
そしてこの男も同じ事を思っていただろうに違いない。
母は一年前に癌を患い、暫くして自宅での療養も始まったが長くはもたなかった。
俺はあの男が居ない時だけ看病が出来たがそれ以外は自分の部屋に閉じこもり、明日を待つ毎日。
母の事は好きだった、しかし正直なところあの男の方が母に対する愛情は強い。その所為か自然と最後の方は母とも距離が離れていった。
「お前―、働いてるのか?」
ボンヤリとしていたら声が聞こえた。
「……え?」
父親はいつの間にか俺を見つめていた。
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