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噂の書店
深い森の中。選ばれたもののみ入ることの出来る書店があると言う。
噂によると、その書店は木造の建物で男の店主が居ると言う。
建物は、外から見るとそこまで大きくはないが、中には入るととても広く、背の高い本棚がズラリと並んでいるらしい。
と、ここまでは良いのだが、目の前にそれらしき建物が見えるのは気のせいだろうか?
入らないのも何だか勿体ないし入ってみようかな。
「あの此処って書店であってますか…」
「いらっしゃい!」
「ん?」
あれ?おかしいな。さっきまで森に居たんだけど、、
目の前には和服姿の人々が行き来する情景が見える。
「あの、此処って?」
「此処かい?此処は江戸総書店だよ。」
「江戸総書店ですか。和服はレンタルでしょうか?」
「レンタル?何だいそれ?それに、お前さんだって和服じゃねぇか。」
「え?」
自分の姿を見る。確かに和服だ。先程まで着ていたベストやズボンはどこへ行ったのだろう?
「なぁ、お前さんどこの時代の人だい?」
「令和ですけど、、此処令和じゃないんですか?」
男は神妙な面持ちでこう言った。
「落ち着いて聞いてな。此処は江戸だ。」
「江戸ですか。…え!江戸!?」
「ここの書店はな、お前さんみたいに令和だとか平成?だとか言う所から迷い込んじまうのがたまに居るんだよ。」
「そうなんですか…」
「ちょっと待ってな、今店主様呼んでくるから。」
そう言うと受付の男性は、奥へ行ってしまった。
江戸ねぇ。タイムスリップってことか?
外から見るとこじんまりしているのは、次元をまたぐトンネルに過ぎなくて、あの建物自体は書店じゃないって事か?
…。いや、信じろとでも?!急すぎるでしょ!
「お待たせいたしました。店主の北条と申します。」
北条と名乗る男は背が高く、着物の布で出来たスーツのような服を着ている。
「あの、北条さん。その服ってスーツですよね?」
「えぇ、特注なんですよ。」
「特注ですか、凄いですね。」
「ありがとうございます。所でお名前伺っても宜しいでしょうか?」
「申し遅れました、星崎 凛音と申します。」
「男の子で凛音ですか、珍しいですね。」
「えぇ、男なのにおかしな名前でしょ?」
「そんなことないですよ。格好いいではないですか。」
「そうですかね?ありがとうございます。」
名前を褒められたのは初めてだった。
北条さんは、大人っぽい雰囲気で紳士って感じだ。
「所で、星崎さんは令和から来たんですか?」
「えぇ、巷で噂の限られた人のみ見つけられる書店を見つけて、扉を開けたら此処に来ていました。」
「なるほど。限られた人ですか。」
「はい。」
「星崎 凛音さんでしたよね?」
「はい、そうです。」
「少しついてきていただけますか?」
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