五頁 鳥 弍 『人生ゲーム』

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五頁 鳥 弍 『人生ゲーム』

五頁    鳥 弐   『人生ゲーム』    益々、益々、猫ちゃんとの距離が近付いていく。  カフェでは、お喋りの苦手な私を気遣って、話し掛けないでいてくれたね。  二人で行った蛇喰商店街、猫ちゃん気に入ってくれたかな? 相合傘をする為に行ったのだけれど、始めは焦ったなぁ。猫ちゃん、凄く距離を取るものだから、まだ相合傘は早かったのかな? って思っちゃったよ。    でも猫ちゃんが風邪引いちゃったら、負い目を感じすにはいられないから、傘を渡そうとしたのだけれど、私の心を知ってか知らずか、猫ちゃんは、側に来てくれた。  私達、まるで十年来の友達の様に、心が通じ合っているんだね。  最後なんか、し、し、親友……ふっ、うふふ……親友だなんて言いそうになっちゃって、まだ初めてお話しして四日しか経って無いんだから、気が早すぎるよね! あれだけ恐子に念を押されたのに、私ったら……  でも、計画はまだ終わってない。夜の行いによっては、友達という立ち位置すらも脅やかす可能性だってあるのだ。  商店街から猫ちゃんの家まで四十分程、私はあれこれと考えていたせいで、無言になってしまっていた。そんな私を気遣って、猫ちゃんも話し掛けて来なかった。  家の中に入ると、唐揚げの美味しそうな香りがした。私が靴を脱ぎ、「お邪魔します」と言うと、美味しそうな香りのする方から、「今手離せ無いからこっちいらっしゃい」という女性の声が聞こえた。 「ぴ、ぴぃちゃん上がって」  あっ、やっとあだ名で呼んでくれた! う、嬉しい。  案内された部屋に入ると、キッチンで大量の唐揚げを揚げているおばさんと目が合った。 「お母さん、と、友達の、優子ちゃんです」  ぴぃちゃんって、紹介してくれないんだ? 「いらっしゃい! ちょっとご飯よそってくれる?」  パンチパーマの様な髪型のおばさんは、早々に客人を顎で使った。  三つの茶碗にご飯をよそい、テーブルに持って行った所で聞いてみた。 「他の御家族の分はどうしますか?」  すると猫ちゃんが応えた。 「うちの家族は、ご飯食べる時間バラバラなんだよ。猫はお母さんと一緒に食べるけど、お兄ちゃん二人は帰るの遅いし、お父さんに至っては部屋で食べるんだよ」  そういえば、家族構成聞いて無かった。まぁ、他の奴の事なんてどうでもいいけど。 「そういえば、今日タツヤ帰って来ないらしいよ。ユウヤは知らんけど」 「えっ、そうなんだ。あっ、ユウヤは長男で、タツヤってのは次男だよ」  猫ちゃんは、私が話しに置いて行かれない様にわざわざ伝えてくれた。覚えるつもりは無いけど、嬉しい。 「さぁ食べるよぉ」  おばさんは、山の様に、それは、本当に言葉通り、山の様な大量の唐揚げをテーブルの中央に置いて言った。  食べるよって、他の料理は無いんだ? 小鉢なんかを運ぶ為に立っていた私の気持ちも考えて欲しい。 「こ、こんなにたくさん、食べ切れるんですか?」  私は、椅子に座りながらそのおばさんに聞いてみた。 「ウチは大量におかず作って、それ食って残ったやつを後から帰ってくる奴が食うスタイルなんだよ。だからたまに、イチカと私で食い過ぎて、後の奴におかず残らない時だってあるんだアッハッハッハ! でも気にしないでいっぱいお食べ! 屁から唐揚げの匂いするくらいたらふくお食べアッハッハッハ!」  下品な女だと思った。猫ちゃんはきっと、この人を反面教師にしたおかげで、ここまで素直で健やかに育ってこれたのだろう。  箸で唐揚げを取り食べてみると、めちゃくちゃ美味かった。正直、今まで食べた鳥の唐揚げの中で一番美味しかった。お母さん、ごめんなさい。こんな不潔な女の唐揚げを、あなたの作ってくれた唐揚げより美味しいと思ってしまってごめんなさい。 「そういえば、あんたお名前は?」  この女は……  さっき猫ちゃんがわざわざ紹介してくれたのに、もう忘れてしまっている。そして、口にそんないっぱいに食べ物を詰めて喋るな。 「小鳥優子です」 「あっほんとぉぉ」  何が? 「ことり? それってこのとりの事?」  そう言うと、おばさんは己の腕をバサバサさせて羽に見立てた。 「そうです」  そんな老いさらばえた腕を羽と見做してやったこっちの気苦労を慮って欲しい。 「ごめんねぇ、そんな名字って知らないから、おかず、鳥の唐揚げにしちゃったよ」  何に気を使っている? そんな事を謝るくらいだったら、さっきご飯を食べる前にした屁の話しの方を謝れよ。 「そんな事、気にした事ないですよ。ウチでも鳥の唐揚げ食べますし」  私が喋っている隙に、おばさんは唐揚げを一つ口にほうばった。 「名字が小鳥って知ってたら、違うメニューにしたんだけどねぇ」 「お気になさらず」 「でも、たまたま鳥の唐揚げだったのは気の毒ねぇ」 「気にしてませんよ」 「他のと迷ってたんだけど、鳥が安かったからねぇ」  しつこいな! あんまり言われるとなんか、蔑まれてる感覚に陥ってくるよ!   あぁ、あぁもう。そんな話しをしてる最中くらいは鳥の咀嚼を止めろ!  申し訳無いとか全く思って無いでしょ? 「いつもはどんな料理をされるんですか?」  話題を変えたくて聞いた。 「そうねぇ、親子丼なんかはよく作るねぇ、あとチキンカレーとかバンバンジー、豚の生姜焼きとか手羽煮込み、サムゲタンなんかも作ったりするねぇ」  わざとだろ? ほぼほぼ鳥料理じゃん! 喋ってて気付かないものなのかなぁ? あとそんなに口いっぱい詰めて話すもんだからさぁ、食べカス顔に飛んできたんだけど? 汚いなもう、あれ、どこだ? これか。鳥の繊維じゃねぇか! 喧嘩売ってんだよねぇ? これって喧嘩売ってんだよねぇ? よし! もう分かった。次に鳥の話ししたらキレよう。そうしよう。 「でも……イチカが友達連れて来るのなんて初めてだねぇ、小鳥ちゃん? イチカと仲良くしてやってね?」  きゅ、急に良い話しするんじゃないよ。もう、キレらんないじゃん…… 「そんな、イチカちゃんに仲良くしてもらって、私はとても嬉しいんです」  あっ、ずっと、ずっと猫ちゃんに伝えたかった言葉を言えた。恥ずかしくて言えなかった言葉が、自然に唇から溢れでた。  おばさん。さては、マジシャンかメンタリストか? こうなる事を見越して、誘導したのかと思った。私は、まんまとその術中にはまってしまったのだ。 「もう食べないんだったらラップかけちゃうよ?」  そこから小分けにしたりもしないんだ? どうやって冷蔵庫入れるんだろ? あっ、冷蔵庫にも入れないんだ……  ごちそうさまを言って、リビングを後にした。猫ちゃんに誘導され、待望の猫ちゃんの部屋に入った。色味が無く、地味な部屋だったけど、そこにまた惹かれた。 「あっ、キャリーバッグを持って来るんだよ」  猫ちゃんがそう言って部屋を離れた後、ベッドの枕に顔を埋めた。うん。少し臭い。でもそんな事も受け入れて、仲良くなっていきたいね。  猫ちゃんが私のキャリーバッグを転がして戻って来た。ドアを閉めて二人きりの空間になると、むず痒くて、喋れなくなってしまう。そんな時の為のこれだ! 「じゃーん。知ってるかな? 人生ゲーム」  私は、キャリーバッグからそれを取り出し言った。 「あっ、あはぁ、知らなかったんだよさっきまで」  さっきまでって何? まぁいいか、楽しいボードゲームの時間だ。 「人生ゲームって、聞いた事ない?」 「き、聞いた事無いんだよ。い、今までの人生を振り返って懺悔しろって、事なのかな?」 「懺悔? 何言ってるの?」  「こ、これまでの人生を、最後に鑑みろって、事だよね?」  深いなぁ。ただのボードゲームに、そこまで理由を求めた事無かったなぁ。 「良い考察だね。そう考えてやってみようか」  それから、二人とも何も喋らず、黙々とゲームを進めた。ルーレットを回す、カラカラカラァ、という音だけが部屋に響いた。  中盤、猫ちゃんの回したルーレットの目は三だった。進めると、「ふりだしに戻る」と書かれていた。  私がルーレットを回そうとすると、ゲームを始めてから、猫ちゃんが初めて喋った。 「こ、こんなの、無いんだよ」  それが、人生ゲームの楽しさだ。 「猫ちゃん、ふりだしに戻っちゃったねぇ。私に追い付けるかなぁ?」  猫ちゃんは、声を震わせながら言った。 「ね、ねぇ? この、こ、この、人生ゲームで負けたら、ね、猫はどうなるの? 今はまだ、半信半疑なんだよ。そんな事する人だって、思いたくないから」  えっ? えぇぇぇ? や、やばいよ。猫ちゃん、ゲームに入り込んでやるタイプなんだ!  私は、粛々とゲームを楽しむつもりでいた。でも、猫ちゃんは違ったんだ。もっと、アグレッシブに、ゲームの世界に入り込んでやりたい人だったんだ。 「何を言っておる? そんな戯言が、通用するとでも思うたか?」  それっぽく返してみた。猫ちゃん、喜んでくれるかな? 「う、うぅぅ、うぅぅぅぅ」  エェェェェェェェェェェェエ? 泣き出したんだけど? えっ? えっ、えっ、謝ろう……  いや、違うか? 女優や声優志望が増える昨今、友達を使って、自らの演技力を試す人が増えていると小鳥の報せで聞いている。  そうか、猫ちゃんはそっち側志望の夢みる女の子なんだ! 私は、その夢を笑ったりなんかしない。猫ちゃん可愛いもん。きっと、スターになれるよ! 応援しているからね!   そんな、人には簡単に言えない将来の夢さえ教えてくれた猫ちゃんの背中を、私は力いっぱい押した。 「何を泣いてるんだい? こうなる事など始めから分かっていただろ! お前は、このゲームに負けたら、私に恥辱の限りを尽くして死ぬのだよ」  私の演技、流石に臭かったかな? ちじゅくなんて言葉、よく思い出せたもんだよ。 「ウガァァァァァァァァァァァァァア! ほ、本当にそうだったんだよ! く、く、く、狂ってるんだよ! ぴ、いや、小鳥は、狂ってるんだよ!」  確かに! ぴぃちゃんだと、何だか世界観くずれるもんね? そこまで意識してやれる猫ちゃんは、本物だよ。 「ハハハッ、私はルーレットを回すとしよう。ほぉうら? いつもより良く回っておるわ。おや? 九が出たな、最高の出目じゃ! ただ止まる場所によっては……なになに? 油田を掘り当て$60000貰うだと? ハーハッハッハッハ! 愉快じゃ! 愉快じゃ!」  部屋の外から、「もうちょっと静かにあそんでねー」という、さっきのおばさんの声が聞こえてきた。ヤバい、己が役に入り込み過ぎてたみたいでヤバい。 「ね、猫が回すんだよ」  猫ちゃんがルーレットの力点を掴むだが、その指が震えていた。そんな細かい所にまで気を配れる俳優が、日本に居るのだろうか? 「ふふっ、楽しみじゃわい」  私は、何故か魔王みたいなキャラ付けをしてしまっていた。だって、急に悪者を演じろなんて言われても、丁度良い役作りなんか出来なかったから。  ゲームは、進行度合も資産も、私の大幅リードで進んでいった。  どうしよう……本当は、猫ちゃんに勝たせてあげたい。ドラマやアニメが好きな猫ちゃんはきっと、物語が好きな筈だ。物語の定石は、劣勢の主人公が、最後の最後に敵に大逆転するのが醍醐味だ! その痛快さを演出出来れば、私と彼女の仲は揺るがないものになるのだろう。  ただ、どうにもじれったい! 彼女がルーレットを回し、出た目に止まると、いつも彼女は、「あぁ」「なんでぇ」「また?」「あぁぁぁあ……」の繰り返しなのだ。  この子、滅茶苦茶運悪い! お金取られる系ばっかのマスに止まるし、ってか狙ってやってるとしか思えないくらい糞マスにしか止まらない。  ただ、今までそんな忖度した事無かったから気付けなかったけど、ルーレットも、完全に運否天賦じゃない。力加減で、ある程度狙ったマスに止まる事が出来る。  私は、イカサマくらいの弱い捻りで、わざと悪いマスに行き着く様に調整していった。 「ぐぉぉう、まさか、またこんな所で足止めとは、一回休みで更に$20000も持っていかれるとは……」  そんな茶番を繰り返すせいで、かれこれ二時間程ゴールに辿り着けないでいる。私もどうにかして一度はふりだしに戻ったのだが、ルーレットの八百長も完璧では無く、ふりだしに戻るマスの最終ラインを破ってしまった。彼女がその最終ラインを破るまでには、三回程ふりだしに戻っていた。 「ね、猫が回すんだよ」  何かに取り憑かれた様に、彼女は同じ言葉を吐きルーレットを回す。その時出た目は六、本日、彼女の最大の出目だった。  止まったマスは、美容師になるかどうかの選択が出来るマスだった。人生ゲームにおいて、職業は今後の展開を大きく左右する分割点である。美容師は、中の下あたりだろう。  でも、彼女のルーレット運の無さを思えば、答えはもう決まっていた筈なのだが…… 「美容師には、ならないんだよ」  えぇっ? ならないの? な、何で?   私は適当に順を終えた。  あっ! そうか……次のマスは、タレントの選択マスなのか。きっと、譲れないんだよね。ボードゲームでだって、夢を諦めるなんて事出来ないんだよね? 「ね、猫が回すんだよ」  いつもの掛け声と共に、いつもの様に力いっぱいルーレットを回した。勢いを無くしたルーレットの挙動を見て、完全に四か五辺りで、一に止まる可能性はゼロだと思った。だから、彼女の後ろの窓を指差して叫んだ。 「あっ! ヤモリ! ヤモリいる! ヤバっ! ヤモリいる!」 「えぇぇっ? ヤモリ?」  彼女は、完全にその後ろの窓に釘付けになった。そこで、四で止まったルーレットを一にしてやった。 「ヤモリ何処?」 「逃げちゃったみたいだねぇ」 「見たかったなぁ」  好きなのかよ。嫌がると思って言ったのにさぁ……  彼女は、振り返り、ルーレットの出目を見て言った。 「あ、一だったんだよ」 「そうだね」 「四の弁護士を狙ってたんだよ」 「えっ?」  そうなのかよ…… 「でも、タレントはなかなか良いんだよ! この職業にかけてみるんだよ」 「良かったね、猫ちゃん」 「えっ?」  あっ、しまった。キャラを忘れてた。  猫ちゃんも随分敏感だなぁ。ずっと魔王キャラ疲れてくるよ。でも、猫ちゃんはやると言ったらやる子だから、付き合ってあげなきゃ。  きっと友達って、自分の思うままばかりの言動を取っていたら上手くいかないんだよね。それなら私は、出来得る限り猫ちゃんの気持ちに寄り添ってあげたい。 「良かったね、猫ちゃん……とでも言うと思うたか? 今からお前にルーレットの目が悪くなる呪いをかけてやろう。カルバスビスガワタビ……ハァッ! これでお前の勝ち筋は無くなった」 「えっ……何してるの?」 「な、何って、呪いをその……」 「あっ、あぁ、そう、ですか。そっち系の人だったのか……」  えっ、何? そっち系の人? あぁ魔王のキャラって分かって無かったんだ。恥ずいから素に戻るのやめてよ。  その後は、出来るだけキャラを抑えるのに気を使ってゲームを進めた。それにしても、やはり彼女はルーレット運が皆無だった。 「の、呪いは、本当にあったんだよ……」  スベッたノリを蒸し返すのやめてよ! それに、始めからあなたルーレット運ゼロだよ。猫ちゃんのイジワル!  そうこうしている内に、私はゴール付近まで来てしまった。でも、ピッタリ止まらなければ上がれないルールなので、ルーレットの出目をコントロールして彼女を待とうと思っていた。  ルーレットの力点を掴み言った。 「三が出れば私はゴールだ! 圧倒的な差をつけて貴様を蹂躙してやろう! ハァーッハッハッハッ!」  力加減を弱めに回そうとすると、「何時だと思ってんの! 静かにしなさい! あといい加減お風呂入りなさいよ!」とおばさんにドア越しに叱られて、手元が狂って、ルーレットを勢いよく回してしまった。 「あぁ……」  でも流石に、都合良く三に止まる事は無いだろう。  ……  三に止まった。  あのおばさんに、さっきの鳥イジリの件も兼ねて、暴行という報復を行っても許されるんじゃないかな? と思った。  しかし、人生ゲームは先にゴールした方が勝ちでは無い。総資産が多い人が勝ちだ。だから、まだ彼女の勝ち筋は残っている。  私は、祈る様な気持ちで、ひたすら一か二の出目を繰り返して進む彼女を見守った。でも、彼女が適当に買った株券が大暴落した時に諦めた。  要所要所でヤモリを餌に、ルーレットの八百長を敢行して、何とか接戦になりつつあった。  もう少しで、順位の賞金も加味して、彼女が私を上回る所まで来た。あと九マスで上がりなので、ここからはゴールの二歩手前にある、大量の$が貰えるマスに導こうと思っていた……矢先の出来事だった。 「あっ、ゴールなんだよ」 「はっ?」  油断してた……あまりにも一か二しか出ないから、九の出目がある事を忘れてしまっていた。ってか、今まで最大で六までしか出てないのに、こんな所で九って、どんだけだよ!  賞金を貰い、彼女は一生懸命に総資産を数えていた。  駄目なんだよ。勝てないんだよそれじゃあ。  お互いの総資産を告げると、彼女は、この世の終わりの様な表情をした。 「ね、猫の負けなんだよ。い、良い所まで行ってたのに、猫が負けたんだよ」  ごめんね。私がちゃんと負けてあげれていたら、猫ちゃんが傷付く事は無かったのに。 「クァーハッハ! この勝負、私の勝ちだな!」 「こ、こんな人生の最後、無いんだよ」  これ、いつまで続ければいいの? でも、猫ちゃんがやめる感じ出してくれないと、さっきみたいに、「えっ?」っとか言われても困るし。 「ね、ねぇ? 最後に、お風呂で身体を清めて来てもいい?」  あーまだ続ける感じだこれ。他にもやりたい遊びがあるのになぁ…… 「行って来るがよい! 清めた身体から滴る血を啜るのが楽しみじゃわい」 「ヒィィィイッ」  いや、引かないで? あなたの為にやってるんだから。  彼女が風呂場に行ってから、どうにかこのノリを終結させる方法を考えていた。  そういえば! 確か、人生ゲームでは結婚と出産のイベントで同乗者が増えると、最後に貰える賞金が増えるルールがあった筈だ。    今の内に、猫ちゃんのコマの同乗者を増やして、私のを減らして、総資産を逆転させよう! なんという名案だろうか!   猫ちゃん、喜ぶだろうなぁ。  彼女の満面の笑みを思い浮かべて、ベッドの枕を手に取り顔を埋めた。
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