現代の職探し

4/6
前へ
/6ページ
次へ
 なんとか予定時刻の2分前に辿り着いた。事前にメールには予定時刻になったら、ドアをノックして面接室に入るようにと通知されていた。  会場にはご丁寧にその旨の説明文も掲載されていたので、吉田は2分の間に息を整えた。ノックすると中から少しの間があり、「どうぞ」という渋みがかかった声が聞こえた。  ドアを開けると、中には40代半ばから50代半ばくらいの男性が両手の指をお互いに絡ませながら、テーブルに上に腕を置き、落ち着いた様子で出迎えてくれた。 「K大学、経済学科の吉田です。本日は宜しくお願いいたします」 「はい、宜しくお願いします。そこのイスに座ってください」 「ありがとうございます。失礼いたします」  吉田が席に座ると、面接官はペンを持ち手元のノートにメモをとった。吉田は思った。 (もう、面接されているのか。確かに大学に来た就活コンサルタントの先生がノックから、面接が始まっているとか言っていたが、本当のようだ)  一方、面接官は別なことを考えていた。 (あーあー、履歴書忘れてきたよ。今日は俺1人だけだから大丈夫だけど、これが役員面接なら、後で嫌味を言われただろうな。とりあえず、この子が終わったら、取りに行かないとな)  吉田がイスに座ると、面接官は質問をした。 「それでは、簡単に自己紹介をお願いします」 「はい、冒頭にお伝えしました通り、私はK大学経済学部……」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加