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なんとか予定時刻の2分前に辿り着いた。事前にメールには予定時刻になったら、ドアをノックして面接室に入るようにと通知されていた。
会場にはご丁寧にその旨の説明文も掲載されていたので、吉田は2分の間に息を整えた。ノックすると中から少しの間があり、「どうぞ」という渋みがかかった声が聞こえた。
ドアを開けると、中には40代半ばから50代半ばくらいの男性が両手の指をお互いに絡ませながら、テーブルに上に腕を置き、落ち着いた様子で出迎えてくれた。
「K大学、経済学科の吉田です。本日は宜しくお願いいたします」
「はい、宜しくお願いします。そこのイスに座ってください」
「ありがとうございます。失礼いたします」
吉田が席に座ると、面接官はペンを持ち手元のノートにメモをとった。吉田は思った。
(もう、面接されているのか。確かに大学に来た就活コンサルタントの先生がノックから、面接が始まっているとか言っていたが、本当のようだ)
一方、面接官は別なことを考えていた。
(あーあー、履歴書忘れてきたよ。今日は俺1人だけだから大丈夫だけど、これが役員面接なら、後で嫌味を言われただろうな。とりあえず、この子が終わったら、取りに行かないとな)
吉田がイスに座ると、面接官は質問をした。
「それでは、簡単に自己紹介をお願いします」
「はい、冒頭にお伝えしました通り、私はK大学経済学部……」
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