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「勇者様!やっとこの国を救う決心がついたのですね!さぁ、此方へどうぞ、伝説の聖剣がこの城にはあるのです。その名もエクス」
五月蝿い、耳障りだ・・・
『いいか一煌、鷺ノ宮家はいつもトップでなければならない。
お前はその家の長男として生を得た、分かるな。
完璧、それがお前だ。』
俺は――
「あ、脚が・・・動く」
気を失っていたゴブリンが目を覚ましたようだ。
悲鳴をあげ後退る姫の前に騎士長が立ち、ゴブリンに剣を向けた。
「勇者様、此方へお早く!」
騎士長が張り上げた声に驚いたのか、ゴブリンは武器を構えるどころか体を丸めて両の手で頭を抱えた。
その動きに2人は顔を引き攣らせ、刃をゴブリンの頭めがけて振り下ろす。
「待て」
既で止まった剣の下に潜り込むと、やはりゴブリンは怯え震えている。
「お前は、どうして武器を取らないんだ?」
俺の行動がそんなに異質だったのか、この部屋にいる全ての生き物が一様に驚きの反応をみせた。
「あ、え、いや・・・オイラだけじゃ、もうどうしようも無いし・・・」
俺は徐に彼の小さな盾と短剣を取り眺めていると、やはり数奇な視線を感じる。
「そうじゃない。この盾は傷だらけだが、短剣は綺麗で傷一つない。それにお前の手の平は女神の治癒でも治らない程に刻まれた傷跡が沢山・・・ん?これはマメの後か?皮膚も歪に固くなってるな?」
「な、何をしている!?触るな人間!!」
青い顔をしてゴブリンは勢い良く手を払うと、止まっていた時間が動き出したかの様に再び場の空気が緊迫し、騎士長は剣を構え直した。
「勇者様、危険です!コイツらに人の心はありません、言葉など通じるわけも無い。早く息の根を止めないと!」
騒音を背中で受け止めながら、俺は再度ゴブリンと向き合った。
すると恐る恐るゴブリンは語り始めた。
「お、オイラは刃が嫌いだ。刃は壊すばかりで何も生み出さない、オイラは作る事が好きなんだ。皆は変だって言うけど・・・」
そうか――
願い、それが夢――
「凄いな君は、この俺がとどきえない地にいるとは――
決めた、その願いは俺が叶える」
「え!?あの・・・手放して貰えますか?」
目的は決まった。後はそこに向かうだけだ、最短でな!
「ななななな何を言ってるんですか!!!?
勇者様はこの国を救うと女神様と約束されましたよねーーーーーーー!!!!!!!!!!
ねーーー??バルドーーー??」
「は、はい!確かに誓われました姫様!」
そんな期待満々のドヤ顔を向けられても俺は知らん。何度も何度もな、ん、ど、も繰り返すが、この話は3ページまでで終わっているんだ。
「女神にはこの世界を救うと誓ったんだ。誰もこの国とは言っていない。
最初にも言ったが、俺がつくのは魔族側だ。
俺は鷺ノ宮一煌。
今、この瞬間より魔王を冠する者だ」
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