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「ゲヒャッゲヒャ!!人間が何をほざくか思えばおかしか奴だ!フツーはオメー泣き叫びよるとこぞ?ほれ今食ってやるでよ」
楽しそうな顔で手を伸ばす様は、さながら赤子のようではないか。
全く、常住坐臥こういう奴がいるから貴重な若い芽達が芽吹きも待たずして潰されてしまうのだ。
会社の、いや社会の極めて醜い害虫。
「もういい、お前はクビだ」
太い腕の間を潜り抜けながら、俺は真っ直ぐテントに向かって走る。
目指すものは決まっていた。
後ろから重たい足音が聞こえてくるが、やはりテンポが遅い。
長はずんぐりとした体型で脚が極端に短い、その上日々の鍛錬が圧倒的に不足している。
こうなったら小さな獲物を取るのに、大きな図体は邪魔でしかない。
テントに飛び込むと中は想像以上に汚く、異臭で充満していた。
咄嗟に袖口で鼻を押さえると、テントの中心にある屍の山をよじ登る。
屍は多種多様の骨ばかりで中には勿論人間もあった。
屍の天辺、青黒い何かが少し飛び出して見える。
その時、テントは外側から力任せに引き裂かれ、外から頭に太い血管を浮かべ、息を荒らげたゴブリンの長が入ってきた。
「オメー!オラの大事なもんに触るな!!
そのうざこい足引きちぎって食ってやるぅぅぅ!!!」
真っ直ぐと屍の山に突っ込んだ長は、骨を掻き分け掻き分け上にいる俺を捕まえようと血走った目で腕を伸ばしてくる。
俺は屍の山を登り終え、青い何かの上にしがみついていたので骨と共に崩れ落ちる事は無かったが、骨の山が崩れれば長の手が届くのも時間の問題。
徐々に減る骨に比例して、埋もれている青黒い何かの正体が露になる。
やはり、俺の予測はいつでも完璧だ。
「ゲヒャハ!!もー逃げらんねぇぞ。その肉骨までしゃぶり食ってやるわぁぁぁ!!」
もう待てないと口から溢れ出る涎を拭くのも忘れて飛びかかった長は、青銅の塊に轟音と共に跳ね返された。
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