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その音は地を臓を揺らして遥か彼方まで響く――
尻もちをつくことになった長は、散らかった骨の中で青ざめ、冷や汗と震えで明らかに動揺の色をみせている。
俺は青銅製の巨大な鐘から降りると、震える長をおいて置き去りになっていたテルの元へ向かった。
「一煌様、生きておられたのですね」
さっきの轟音で目が覚めたのかテルは痛む体をおして立ち上がろうとしていた。
「当たり前だ、この俺を誰だと思っているんだ?君は安心してそこで寝ていろ」
だが、テルは俺を見て安心するどころかとても神妙な面持ちでしがみついてきた。
「ですが、そんな悠長な事言ってる時間はありませんよ。オイラを置いて早くここから逃げてください!あの鐘は」
遠くから土を蹴るような音が聞こえてくる。
とても沢山の足音と、武器や防具が擦れる音。
俺は微笑むと力強く握られたテルの手を肩から外してゆっくり寝かせてやった。
「俺は魔王、鷺ノ宮一煌だぞ?安心しろ、この俺に二言はない。社員の夢は社長が叶える。社員がする事は心配などではない社長を信じる事だ」
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