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※ ※ ※
「おおおぉオメーは!!さっきの忌々しい人間!!!」
「魔王、鷺ノ宮一煌だ」
それは、とても奇妙な光景でやした――。
魔王と名乗るこの人間は、魔族のシマにたった一人で乗り込んで来た。
それだけじゃねぇ、二百のゴブリン集の面前で、あの長に食ってかかってやがる。
「反対。俺は長が間違っている方に1票」
そんな訳ねぇ、普通人間は魔族を見たら腰を抜かす程怖がるもんだし、第一好き好んで食われに来るわけがねぇ。
「なぁーーーにをガタガタほざきよるかぁーーー!!オメーは今ここでオラに叩き潰されるんじゃぁーーーーー!!!」
そう、それが当たり前だ!んな事餓鬼でも分かるじゃねーか。馬鹿も休み休み言えって、笑い話にもなんねぇ・・・
だけどよ。
――だったら今この両の目ん玉に写ってんのは一体何だってんだ!?
怒り絶頂の長の拳を・・・ただの挙手だけで人間が止めただなんて・・・
大きな拳をバックに、陽の光をたっぷり取り込んで、薄茶色に光る綺麗に切りそろえられた髪をなびかせて、その男はこちらを振り返った。
「他に、賛同者はいるか?
いないようだな。これは困った・・・どうやら此方側は二人だけのようだぞ君?」
へ・・・?って、
俺も入ってんのぉぉーーーーーー!!!???
「ゲェヒャッヒャ!ゲヒャッゲヒャ!!
オラは二百、対してそっちはちんまい人間とよろよろのゴブリンだけだぁ。
これじゃ話にもならんなぁ?
オラは詰まらんのはかなんぞ?
ちぃとはジタバタもがきよれよ?」
魔族の世界は強い者が全てを制す弱肉強食、
俺等下っ端が長に逆らうなんてある訳がねぇ。
もう、駄目だ終わりだぁーーー!!!
俺はここで長に踏み殺されて終わっちまうんだ・・・
こんな事なら家族なんて持つんじゃ無かった・・・すまないお前達――
「お前達は、それでいいのか?」
騒ぎはやし立てていた騒がしい空気が、一瞬にして硬直した。
それもそうだ、男は長のあの圧力を前に平然とした顔で、二百の軍勢に向かって1つの疑問を問うたのだから。
俺を含めこの場の全てのゴブリンがこれで少なからず感じとっただろう、この人間はエリートだと――
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