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母から託されたこの指輪、これは我家に代々伝わる女神様より預かりし聖遺物。
『いいですかミレーヌ、これからは貴女がこの指輪をお守りする番なのです。アリステリアの女子は代々その命の片割れを使い、この指輪をお守りする。それは天より賜ったとても誉高い奉仕なのですよ』
ええお母様、私は今とても誉高く思っております。
「主よ!どうかこの哀れな娘の言葉をお聞き下さい。私はミレーヌ・アリステリア。女神様より賜りしこの指輪をお守り致します、第763代目守り人にございます。私のこの残り半分の命と、永きに渡りアリステリアをお守りくださったこの指輪を主の元へ返します。ですからどうか・・・どうか今も尚苦しんでいる無垢な民達をお救いください!このアリステリアにかの者達を退ける御力を!!」
喉がちぎれんばかりに叫んだこの声に、まるで答えるかのように、祭壇上に立てられた大きな十字架と共にあられる我らの主の像が神々しい光を放った。
光に包まれた私は暖かな光の中でそっと目を閉じた。
あぁ、お父様、お母様。私はなんて幸せ者なのでしょう。
この身を持って民達を救えるだけでなく、神の美心にまで触れる事が出来るだなんて・・・
お母様、お祖母様、曾祖母様、そのまた前の遥か彼方――
女神様よりこの指輪を賜られた最初のアリステリア様。
感じます、今ここにいらっしゃるのですね。
守り人の奉仕を全うされ、ここまで指輪を繋いで下さいました。
いつも私が心より最大の尊敬と感謝を抱いていた誇り高き皆様に背を肩を押して頂けるだなんて・・・
「さぁ、主よ。
私はもう思い残す事はありません。
今、貴方様の元へ参ります」
「ん?何だこれは!松田どうなっている?
ん!?松田!何処だ松田居ないのか!?」
え!?誰の声!?
あ!神様!?
そうですよね、そうですよね!我らが主はこのようなお声なのですね!予想よりも遥かにお若い声色であらせられます!
「あ、あの!・・・大変失礼ではございますが、私はミレーヌ・アリステリアと申します。マツダ?様では御座いません。申し訳ございませんが・・・」
「あっ、おや失礼。突然声を荒らげてしまい申し訳ございませんでした。何分突然のこの光で何も見えなくなっておりまして・・・
えー、声を聞くところお若いお嬢さんのようですがお名前に思い当たりがありません。怪我等はありませんか?無理にその場を動かない方が懸命かと思います。すぐ救援が来ると思いますので」
「救援!!今救援と話されましたか!?救援が・・・助けが来るのですね!!」
良かった!これで皆が助かる・・・お父様も、この国も!!
私は嬉しさの余り駆け出していた。
溢れ出す涙を拭うのも忘れ、真っ白の光の中を夢中で声のする方向へ走った。
一刻も早くこの声の方、神様にお礼が言いたかったからだ。
――そして何歩が走った先で、盛大にぶつかった。
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