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「へぇ・・・へぇ・・・、お前ら重すぎだべっ!エルフんとこさ着く前に、オラが死んじまう!!」
ゴブリンの拠点をたって約1時間、俺達はまだ荷車に揺られていた。
「情けない、車輪を付けてやっただけ感謝しろ。フランク、後どれくらいだ?」
「へい、もう半分は過ぎたくらいかと」
「ん、んだとぉー!?オラの四肢もぐ気かー!」
長の体力も限界にきてるようだし、間に合うか・・・
後ろを見ると、負傷者達が痛みや苦しみを噛み殺すように必死に牙を向いている。
「もうすぐだ、頑張れ」
俺が出来る事は止血くらいの応急処置までだ。
それでは治すことはできない。
布を持つ手に力を込めていると、近くで俺を呼ぶ声が聞こえ、見るとボロボロの体で負傷者の世話をやくテルの姿があった。
「テル!お前の怪我も酷いんだ、休んでいろと言っただろ!?」
テルは不機嫌そうな表情で手を止めると、俺の頭をポカリと叩いた。
そして、一体何が起こったのか理解に苦しむ俺に言い放った。
「何が休めですか!!いいですか!?
こっちはゴブリンの軍勢の真ん前へ、わざわざ自分から出るは、長にまで食ってかかって、その上ゴブリンを引き連れてダークエルフの森に行こうとする馬鹿、大馬鹿を通り越して、もう清々しくも感じるうつけ者を後ろから見てヒヤヒヤしていたんですよ!!!
休んでいられる訳ないじゃないですか!!!
もういい加減肝が凍りましたよ・・・」
「す・・・すまないな」
「はぁ〜、エルフ族ならともかくダークエルフ族は昔から他との交流を一切経ってきた種族です。寿命が長く知性的ですが、その分神経質で気難しい種族だとか・・・。そこへこんな大勢で押しかけたら――って、どうせ言っても同じか・・・」
「成程、職人肌か――、腕がなるな」
テルが深い溜息をついた頃、前からフランクに呼ばれ前方に戻るとそこには、おそろしく長い下り坂が伸びていた。
「やったべーーー!神様はオラを見てただな!!」
慌てて長に静止をかけたが、判断が遅すぎた。
長は既に下り始めており、荷台の車輪も坂道に乗ってしまった。
こうなれば後は――、落ちるのみである。
「「「「うぅーーわぁぁぁぁぁ!!!!」」」」
「荷車で坂を下る時は後ろ向きに慎重にと決まっとるだろ馬鹿者がーーーー!!!!!!」
丘の上から鳴った悲鳴は、広い草原中を響き渡らせながら木々が生い茂る森の中へと消えていった。
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