エルフの森

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勢いがあり過ぎる、これでは荷車がもたない。 いや、そんな事より今考慮すべきはぶつかった時の衝撃だ。 幸いまだ誰も振り落とされてないな。 「ヒェーーオラ殺されるだーーー!!」 「いつまで前を走っている!さっさと止めろ!!」 「んな無理だべーーーー!!!」 どうする、蔦や枝は沢山伸びているが、捕まったら体ごともっていかれる。 それでは動けない奴らは救えない。 せめて車輪が壊れてくれれば―― 「魔王さまぁぁアレでさ!エルフの村!!」 必死にフランクが指さす先には、大木と編まれた太い植物の蔦で造られた門が迫っていた。 「何だとぉ!!??完璧な衝突コースではないかーーー!!」 「「「「うぅーーわぁぁぁぁぁ!!!!」」」」 「オラもう、もう無理だべ!! そ、そだ!これに乗ればっ」 体力の限界をとうに超えた長は、荷車を引いていた持ち手に飛び乗ろうと地を蹴った。 「!!馬鹿やめッ」 俺の体は宙を浮いた。 いや、いくらこの特異な世界であっても人間が空を飛ぶなんて事は有り得ない。 つまりは、荷車から放り出されたのだ。 見た所俺だけではないようだし、持ち手に飛び乗った長の重みで荷台がひっくり返ったか。 このまま地面に叩き付けられたら、人間(・・)の俺は生きていられないだろう。 それは仕方の無い事だ、しかしゴブリン達(コイツ達)は違う。どうにかコイツ達を―― 「一煌様っ!!」 「「「「魔王様!!!!」」」」 お前達!!? 『ドサッ!!ドサッドサドサッ!!』 『ドォッゴォォォォォォーーーーーーーーーーーン!!!』 ※ ※ ※ 『やめてぇ!!もう沢山よ!どうして・・・どうしてどうしてどうして!?私は何もしてない、何もしてないのに・・・あの子を、私の子を、返してよ!!!』 白く透き通るような肌の女性。 髪も服も靴も真っ白な彼女から溢れ出る吐息(言葉)は、白く燃え上がって―― ※ ※ ※ 「――き、――ま・・・」 「い、き――ま」 「一煌様!!」 目を覚ますと視界中が覗き込むゴブリンの顔で埋め尽くされている。 「良かったでさぁ、魔王様無事で!!」 「んだべ、そげでこそオラが見込んだ男よ」 「全く、貴方って人は――」 そうだ、俺は荷車から――。 魔族(自分)ではなく人間()を助けようと手を伸ばすとは、良い社員達を持ったものだ。 「ひぇっ!?笑いだしやしたよ?!」 「コイツ、頭さ打っておかしなったべ?!」 「いえ、残念ながら平気のようです・・・ それはとて一煌様、荷車があのような有様ですが大丈・・・いえ、頑張って下さい」 後ろを振り返ると、そこには門を突き破り大破した荷車。 そこから転がってくる車輪が一つ、フラフラとバランスを崩して倒れると、大変ご立腹な様子で一人のエルフがそれを踏みつけ、それを合図に一斉にエルフ達が弓を引き絞った。
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