エリートは迷わず勇者で無く魔王を選んだようです。

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バルドが叫んだその時、背後の大扉が勢い良く開いた。 その拍子で倒れ込んだバルドと共に、俺の鼻先に突きつけられた傷だらけの鋭い剣は俺の頬に赤い筋を引いて床に音を立てた。 「お!?まだこんな所に隠れてやがったのか! やったぜ、まだ人間殺して遊べる!!」 「おいテメェ等!コイツらはオレのもんだ、腕一本やらねーぞ!!」 低身長で緑の皮膚、尖った形状の鼻と耳。 衣類を纏い武器を持ち、言語を使い集団で行動する魔物。『ゴブリン』や『小鬼族』と言われる魔族と思われる。 数は4・・・いや7はいるようだ。 「何だ?おい兄ちゃんいきがってんな! そんなに死にてぇのか?ヒャヒャヒャヒャ!!」 一匹が笑い出すと他の個体も同じ行動をするのか。コイツらは比較的低能なようだ。 「なんだ、丁度出るところだ。 人よりもずっと魔族の方が出来がいいらしい。 出迎え感謝する。このまま諸君らの指揮官の所へ連れて行って貰えると大いに助かるのだが」 「な、何言ってんだコイツ!?頭でもおかしくなったんじゃ・・・さっさと殺そうぜ」 「あぁ!そうだそれがいい!!」 ゴブリン達は示し合わせると、一斉に武器を構えて向かってきた。 「意外と利口じゃないか、それでいい。 戦況が極めて良い時程気を引き締め、油断しない事だ。徹底して己の利を、勝利を掴め!」 5分56秒。 手斧が頭に、短剣が胸に、槍が腹に向かって進んでくる。 まさか25にして死する事になるとは、流石の俺でも想定してはいなかったな。 「勇者様!!だめぇーーーーーーー!!!!」 最後まで五月蝿い女め!! まぁいい、これで金輪際会う事は無い! あの時点で、俺の未来は決まった。 時計が動くからといって、それが俺の世界の時間と動悸しているとは限らない。 それどころかまず、時間の流れ方や作り、長さや質量等他把握しようも無い。 つまりは何を考えても砂上の楼閣、ナンセンスなのだ。 しかし、可能性はゼロでは無い。 今この状況で俺が絶対に犯せない事、それは顔合わせに遅れる事だ!! 遅刻する可能性がゼロにはならないのなら、今すぐに戻る他ない。 今すぐに戻る方法も時間同様だ、よって俺は死ぬ事にした。 よく物語で見る『夢オチ』と言うような馬鹿げた考えだが、今すぐに実行可能なものはこれしかない! この世界でなら全てが確率不明の賭けになるんだ。それなら俺はこれに喜んでオールインしよう。 視界を閉じ、潔く体全体に金属の刃物を受け入れようとしている俺だが・・・・・・何故だろう。 一向に突き刺さって来ない!!!!
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