出会いと別れ

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出会いと別れ

美沙子と雫は、ビールを飲みながらたわいもない学校と会社の話をしたり趣味の話をした。美沙子は本をほとんど読まないと言う。狂は、フロ○トや太○治を勧めると言った。雫は、今、ベストセラーになっている本はなかなか良いよと勧めておいた。彼女は、たぶん本は読まない。ファッション雑誌などをコンビニで立ち読みして貯金残高を気にしてコンビニを出て行く姿が想像出来る。そして自宅に帰り自室に籠ってテレビを流し見して布団に入り眠りにつく。とても単調で狂は気が狂っちまちそうだと吐いた。「毎日、そうやって過ごす事は誰にでも出来るようで出来ない事だからすごいよ。」と雫は心の奥底から思って言った。美沙子は本当に嬉しそうに「ありがとう。」と言って笑った。 もう二度と会う事も無いだろう美沙子に雫は駅の改札口でまたねと言って別れた。一発やらねーのかよと狂は言っているが雫はそんな気にはなれなかった。自分が彼女の生活の一部になって美沙子がコンビニに入りファッション雑誌を買って服装を気にして生きるようになるのはかわいそうだと思ったからだ。いつかは来る別れを分かっていた。 出会いは別れの始まりだろと煙草を吸いながら狂は呟いた。詩人だねと雫は狂に言った。たぶん、俺様の前世は松○芭蕉だと思うんだよなと狂は妙に畏まった感じで言うので雫は笑ってしまった。 駅のプラットホームにはサラリーマン、高校生、OLがたくさんいる。みんなそれぞれの小さな小さな世界という家に帰って小さな小さな問題を抱えながら夕食を食べて晩酌をして妻の愚痴などを聞き流しつつ新聞を見て眠りにつくのだろう。それは明日もこのプラットホームに立っているために。
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