朝日

1/1
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ

朝日

まだ、誰にも汚されていない朝日の光が教室中に広がっている。 上村雫は、高校に入学してから毎日一番乗りで学校に来ていた。別に部活の朝練習があるわけでも恋人との待ち合わせでもない。 ただ、麦畑に広がるような新鮮な朝日を感じたいから一番乗りしている。冷たい教室の真ん中で朝日を感じて深呼吸し頭の中の血流をスムーズにする。雫の、瞳の中に光がして来てエネルギーを与える。 脈という脈を閃光がゆっくりゆっくりと走り抜ける。そして自分だけの世界に耽る。指先まで光が走り抜けて来たら窓を開けて校門から入って来る生徒達の小さな頭を見つめる。 ここから、朝日と冷たい空気を閉じて自分だけの空間にしたいと雫は願う。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!