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やってきたあなた
30過ぎて初めて子どもを授かった。
何度目かのチャレンジで、初めて検査薬に陽性が出る。何度も何度も説明書と見比べ、間違いではないか確認する。望んでいたことなのに、自分に起きたことが信じられない。
急にドキドキし始める。嬉しいのに、焦るばかりで全然喜べない。
ええと、どうしよう。
何せ、初めてなものだから、何をどうしたらいいか…そうだ、病院だ!
産婦人科を、検索する。数ある中でどこにしたらいいのか迷う。
「どうされましたか?」
妊娠の可能性を告げる。
「検査薬で陽性が出たのですが…」
「あ、それならほぼ確実ですかね」
こちらは初めてだけれど、相手は日常なので、受け答えのテンションが噛み合わない。
とりあえず予約し、その日が来るまで待つ。
たったの数日間がすごく長い。
「おめでとうございます」
先生に笑顔で告げられる。
確信に変わった瞬間。どう返答していいのかわからない。
「あ、ありがとうございます」
もっと素直に喜ぶものだと思っていた。確かに嬉しいはずなのに、顔が強張る。自分のお腹に手を当てる。確かに画面には見えるのに、ここにあなたがいるなんて、信じられない。
帰り道、やっと喜びがわいてくる。
私に、赤ちゃんができたんだ。何度も何度もお腹に手を当てる。
そうだ、まず夫に伝えないと。どうやって伝えよう。喜んでくれるかな。
思考が行ったり来たりして赤信号を見落としそうになる。
いけないいけない
必死で自分を落ちつかせる。
そうだ、仕事はどうしよう。
生活は、どう変わるのだろう。
押し寄せる不安。
それでも負けられない。
だって、あなたに会いたいから。
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