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昨日まで行方をくらませていた男から、破局した女へメールが来た。何故か『お前の職場に来い』と。
女は不思議に感じながらも、そこへ向かった。
「やっと来たか」
女が職場の入口から入った途端、男の声がした。女の正面にうっすら人影が見える。
「突然なに?あなたから切り出されて、私たちは別れたはずだけど」
「ああ、そうだ。でも、お前に俺の最期を見届けてもらおうと思ってな」
女は男の言っていることが分からなかった。だから女は聞いた。「どういうこと?」と。
「その答えを教える前に、まずはコレを見てもらおうかな」
男はそう言って、エントランスホールの照明をつけた。するとその中央に、螺旋状のなにかがある。
「なに…これ?」
それはところどころ欠け、危うい印象を与えている。どのような原理なのか、妙な光も放っている。
「これは…俺の人生だ」
男はそう答えた。
「これが上に行くにつれて、俺が年をとる。そして、ところどころ欠けているのが、俺が罪を犯したところさ。そこに到達すると、人生は真下に落ちる。そうなるとどうなるか分かるか?過去に戻って、人生をやり直しさ。だが、この螺旋にはルールがあるみたいでな。同じ人生を4回歩んで何も変わらなかったら……その人間は消滅する。俺はさっきその4回目を歩んで、失敗に終わった。要するに、俺は今から消滅するってことだ」
「……!」
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