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『消滅する』。そのワードを聞いた女の眼からは、涙が溢れていた。
どうして?
どうして私は、泣いているの?
「俺は犯罪という愚行を行った。そして、人生をやり直してもそれは変わらなかった。ま、俺がこの世に必要ないっていう暗示だったのかもな」
女は後ろから男に抱きついた。
「ごめんなさい!私、あなたとは別れたけど……あなたとは友人として続けたかった。けど、罪人だからって、引き離してた……本当はあなたが好きなの!だから……死ぬなんて嫌!今まで引き離してごめんなさい!お願いだから、私を許して!お願いだから……」
男は振り向かない。
「…何故お前が悪人みたいになってるんだ?悪いのは俺だ。犯罪を犯した俺だ。お前は…何も悪くない。罪人だからと引き離したくなるのも分かる。俺は…お前より馬鹿なんだからよ」
女は男の言い分に納得できなかった。どれだけ馬鹿だろうと、死んでいいなんてことにはならない、と思ったから。
「そうかもしれないけど、でも私は──」
女が自らの気持ちを吐こうと眼を開くと、男の体が少々透け、光の粒のようなものが浮かんでいた。
「ごめん。そろそろみたいだ」
「やだ!私はまだ…!」
「今までありがとう。いつまでも、愛している」
そう言い、男は消滅した。女は、慟哭した。
彼らの眼前に聳えていた螺旋は崩れ去り、女の手には、男の衣服だけが握られていた。
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