3人が本棚に入れています
本棚に追加
朝起きると雨は止んでいた。
「五月蝿くて眠れないよ。」
今日はバイトも無いし、ゆっくりしようと思っていたのに、薄い壁の向こうのテレビの音で起こされてしまった僕は、不機嫌だった。
「あなたも手伝って頂戴。トイレットペーパーとか乾電池とか日用品を買い溜めしておきたいの」
母さんは、戸棚を開けっぱなしで、ガサゴソと片付け乍らスペースを作りつつ、俺の方を振り向いて言った。
「狭山さんが、居なくなってたのよ…それに昨日の雷と大雨でしょ?絶対に悪いことが起こるわ」
母さんは、ぴたりと手を止めていつに無く真剣な眼差しで、ニュースの合間に始まった天気予報を観つつ、同時にスマホのアプリでworld of whether newsを徐に開いた。
「やっぱり…今回も日本なのね…。」
大きなため息を吐くと、俺に準備をする様に急かした。
良く分からないけど、緊急を要する事だけは、分かったから、慌てて洋服に着替え、母さんが運転する車の助手席に顔も洗わずに乗り込んだ。
朝のスーパーの駐車場は、がら空きだった。母さんは、僕にふたつの空のカートを押させた。
「こんなに買うの⁈」
「これじゃあ足りないかも知れないわ」
片っ端からメモに書かれた商品をカートへと入れていき、それを僕は手際良く綺麗に並べてスペースを作る。
「ねえ。狭山くんは、今までに仕事で出掛けるなんて聞いたこと無かったんだけど」
少なくとも俺が、狭山くんの面倒を見始めてからは、一度も無い。
「ヒロシ。今ここでその話はしたく無いわ…良い?」
なんか知らんけど母さんに僕は叱られた。
最初のコメントを投稿しよう!