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一番●●な人が優勝です
「頑張ってね!」
母には強く背中を押された。おのれ、他人事だと思って!と私はやや涙目である。確かに我が家の財政は逼迫してるし、選手権が開催されると知った時“私が出ます!”とやけっぱちで手を挙げてしまったので自業自得であるのだが。
階段を登る足が、震える。
昔やっていた、人気のテレビ番組に影響されて始まったこの企画。“全国高校生●●選手権!”。この●●のところの内容はその時々で違う。ただ、屋上でスピーチして一番を競う内容であることが多い。うら若き青少年が、屋上から本音や昔話を大声で叫ぶ構図かいいらしい。確かに、テレビ映えするといえばするのかもしれないが。
――だからって、このお題考えたのは誰よもう!いやこのお題なら私でも参加できるんじゃね?とか思ったのは私だけど!お金に目が眩んだのも私ですけど!
貧乏な我が家。このままでは家のローンも危ぶまれる始末。わかっている。何がなんでもこの選手権で優勝して、賞金をゲットしなければならないのだ。
絶対に負けられない。負けるわけにはいかない。
私は屋上に辿り着くと、一気にマイクを設置してある台座まで駆け上がり――そして。
「N高校二年四組!島津紗良!私の話をしまーすっ!」
叫んだ、それはもう恥も外聞もかなぐり捨てて。
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