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彼女の元に駆け寄り、彼女を抱きしめた。
「わ、ちょっ、どうしたの、」
「ごめん、ごめん。来るの、遅くなった。」
「うん。」
「好きだよ。おれ、お前のことちゃんと好きだよ。」
「どうしたの、急に。」
「おれも写真撮ったらお前のことしか撮らないくらい、好きだよ。どんなときもかわいいって、愛しいって、思ってるよ。」
そういうと、まさか、と彼女は呟いた。
やっぱり勝手に見たのはまずかったか、なんて。
「だから、一緒に帰ろう。」
ギュッと力を込めるように彼女を抱きしめると、彼女はバカと照れながら言いおれの背中に手を回した。
本当はもっとちゃんとした言葉で、本当はもっとちゃんとした形で、たくさん伝えたいことがある。
でも、きっと今はこれでいい。背中に回された体温でわかる。わかってるよ、と彼女が言っていることが。
不器用なおれだからうまく伝えられないことはきっとバレていて。それに甘えてばかりのおれだけど、そんなおれのこと、どうか許してほしい。
おれの世界は君が中心だから、おれの世界に君がいればいいくらい、君を想っているから。
君の世界におれがいるように、おれの世界には君しかいらないから。
「好きだよ。」
「ふふっ、うん、わたしも。」
微笑んだ君の頬に触れて、そっとキスをした。
カメラの先の彼女の世界は優しく、温かい。
その世界にはたくさんのおれがいた。
どうかこれからは自分の世界だけで終わらせないで、その世界をおれにも見せてよ。
同じ世界で、同じ世界をみて、これからを生きていこう。
生きていきたい。
彼女とカメラと、それからおれと。
fin.
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