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「ママ」
背後からそうはっきりと呼ばれた。
なあに?
そう答えてあげたいけれど、そうしたら娘が消えてしまいそうな気がして、私は黙り込んでしまう。
「ママ」
もう一度私を呼ぶ声。ごめんね千枝ちゃん答えられない。すぐ後ろに貴方はいるのにね。
心の中で何度も謝る私に、娘が言った。
「ママ、私いなくならないから振り向いて。約束する。ママのそばから消えたりしないから。お願い。」
懇願する娘に私は恐る恐る振り向く。そこには少し大人びて化粧をした千枝ちゃんがいた。あの日の制服のままなのに、顔立ちはすっかり成長している。
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