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目が覚めた。眩しかった。
長い長い夜が明けた。
結局、いつもより少し長いだけの、「夢」であった。
千枝ちゃんおはよう。ありがとうね。
久しぶりの太陽にそっと手を振り返す。
数えてみたら14年間が経っていた。私は娘が亡くなってからというもの、彼女といない時間を、14年間過ごしていたらしい。
今日のスクランブル交差点は、新しいビルが増えてあの頃と変わらず目まぐるしく人々が行き交っていた。向こうから千枝ちゃんはやって来ない。やってくるのは当時の千枝ちゃんと同じ歳くらいの別の子たち。集団でじゃれあいながら笑っている。
私も千枝ちゃんもこの行き交う人々のうちの1人だったねと心の中で呟くと、世の中の幸福な人に負けた気がして泣き出しそうになった。
でもね千枝ちゃん
ひとつ深呼吸をして叫ぶ
私は千枝ちゃんのいない世界でも明るく生きていくから。貴方を忘れず、貴方のいた時間の中の世界を愛おしみ、貴方のいない世界を恐れずに。
スクランブル交差点
この誰にも聞こえない私の叫び声が宙を舞って太陽に届いた。
瞳から流れる最後の一滴が、太陽の光にきらめく。
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