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「お、何だ、凪、今日はソレだけなのか?」
「…………そうみたいだね」
パラ、と書類の束を巡って、今日の巡回経路を確認していれば、ヒョコと後ろから自分が持つ手元の書類を覗き込む1人の人影。
「御影は件数多いんだからゆっくりしてられないんじゃないの?」
「大丈夫、っつーかオレの方が先輩だって何回言えば分かんのかな凪ちゃんはー?」
グリグリグリと人の頭を少し乱暴に撫でる彼の名は御影。自分よりも数年早く、この仕事に就いている。
一応、先輩で、僕のチームメイトで、僕の相棒でもある。
ハッキリとした顔立ちにやけに派手に着崩す制服と派手な髪色をしているので、出来れば関わりたくは無かった。
けれど、僕が見習いとして、あの先輩の下についた時から、先輩と仲の良かった御影に妙に絡まれ続け、先輩が居なくなってからは、何の策略か御影が僕の相棒になり、絡まれる毎日を過ごしている。
退屈は、しないけれど。
出来れば、僕は、あの先輩の下で、働きたかった。
けれど、
先輩は、ある時以来、帰ってこない。
此処に居るのか、居ないのか。
存在しているのか、居ないのか。
それすらも、分からない。
そんな存在に、先輩は、なった。
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