カミサマの母親

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 ***  蒲公英が幼稚園を卒園しそうなくらいの外見になり、僕の掌に乗せるには随分と重くなった頃。僕の体に、ある異変が起き始めた。  最初は少し胸が痛いな、と思ったくらいだ。そして、かなり痩せぎみであったはずなのに、胸とお尻だけがなんだか太ってきたな、と。しかし、蒲公英と出会って一ヶ月くらいが過ぎる頃には、僕の胸ははっきりとわかるほどに大きく膨らんでしまっていた。男の子のおっぱいではない――どころか、同じクラスの女の子と比較しても大きすぎると思う。僕は必死でネットで調べて、包帯を巻いたり姉の古い下着をこっそり借りたりして胸を隠すことを頑張らなければならなくなった。  そして、下半身も。胸と違ってそれは唐突に来た。お腹が痛いと思ったら、下着がまさかの血塗れになっていたのである。僕は、下半分の方も女の子になってしまっていた。保険の勉強はしたからなんとなくわかる。男の子のものがなくなってしまって、いつの間にか女の子のものになってしまっていることに。――これでは立ってトイレができないや、と最初にぼんやり思った僕もズレているのかもしれないが。  幸い元々から女の子みたいな顔だったし、声変わりも来ていないので誰にもバレずに済んだけれど(生理の時、こっそり姉の生理用品を借りるのは恥ずかしかったが)。流石にこうなってくると、僕の今後の人生を大きく変えてしまうのは間違いない。確かに僕は男の子として生まれてきたし、今だって好きな相手は女の子なのだから。そもそも女の子として最初かは生まれてきたのなら、きっと母ももう少し自分のことを気にかけてくれたと思うのである。  普通には起きないことが起きたならそれは、神様の力以外には有り得ない。 「なあ、蒲公英。僕の身体を女の子にしたのはお前なのか?」  僕が蒲公英に尋ねると。すっかり話すのがうまくなった蒲公英は、“違うよ”と首を振った。 「でも、蒲公英と一緒にいたからではあると思うの」 「一緒にいたから?」 「ママが、蒲公英の本当のママになるために。お母さんの体になる方がきっといいって、そう思ったんだと思うの」 「そう思ったって、誰が?」 「決まってるわ」  彼女はにっこりと笑って、言った。 「カミサマが」
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