1.俺のしたいこと [2]

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1.俺のしたいこと [2]

「速報です。昨日未明、東京都○○の河川敷にて、血を流して倒れている男性がいるとの通報があり、警察が駆けつけたところ、河川敷でひとりの男性が仰向けに倒れて死亡しており、現在身元の確認を行っているとのことです。警察によると、何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いとーー」  ぶち、と先ほどまでラジオから流れていたニュースキャスターの声が途切れた。何事だろうかとラジオの電源を切った乗客を見やると、そいつはラジオ機器をリュックになおして電車から降りるところだった。客のまばらな車内で、車掌の「終点です」の放送が虚しく響く。俺含め、そこで初めて終点だと気づいた客が電車からのそのそと立ち上がり始める。俺は幅の狭いホームに降り立ち、後ろを振り返ってぼろぼろの車両を見つめた。田舎はどんどん寂れていく。8年前までは五両編成だった電車が、もう今では二両になっているように。  屋根のないホームで、深呼吸をした。俺がこれから行くのはこの駅の先。かつてこの線路の終点だったところ。 「兄ちゃん、こんなところへ観光かい」
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